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「――って、一人じゃ危ないよ、送るよ?」
くるりと少年が振り返った時、娘の姿はそこに無かった。
代わりにあったのは――
「……あれ? 悠夜君、何でここにいるの?」
「…………」
少年がつい先程出て来た御所の、天才と名高い術師の子供がそこにいた。
何故そこに、との問いを、大人びた術師の子供がはぐらかす。
「……内緒。絶対教えないってことを条件に、降りてきてくれたから」
「?」
それだけ言うと、フイと踵を返した。
術師の子供がずっと気になっていたこと。
ある死者との別れを、死者が望む形で終えることを、子供は手伝うことしかできなかった。
――ありがとー……悠夜くん。
それがどれだけ大きな救いであったか――瑠璃色の夜の空だけがきっと知っている。
-了-
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