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 帽子の少年が瑠璃色の髪の幼女と紅い少女を連れて来たのは、京都の管理中心地である「花の御所」という大邸宅だった。  元々その大邸宅が、帽子の少年の友人達の住む場所と知っていたので、それは予測していた。  しかし友人達にでなく、先にその親に歓迎を受けることになった状態は、幼女にも紅い少女にも想定外だった。 「おお! 何とイタイケな女の童なのじゃ、本当に!」 「すげーな頼也(よりや)(つぐみ)の小さい頃を思い出すなー!」  直衣姿の公家と、着崩した袴姿の侍。 「……初めまして。ウツギネコハです」  先に挨拶を済ませた紅い少女と共に、座敷に正座する。ぺこりと頭を下げる前では、二人の男が穏やかに笑いながら座していた。 「棯殿から先日に、話は伺っておるよ。まさかこんなにすぐに、会うことになるとはのう」  一人は翠の直衣と烏帽子を着こなす、短い黒髪と青みがかった黒い目の公家で、端整な顔立ちでも御所の管理者だ。  もう一人は赤い髪を無造作に束ね、赤い目で浪人風の非常に体格の良い男だった。 「別にジパング届出名で名乗らなくていーんだぜ。ユーオンもそんなの気にしてなかったしな」  気さくさの滲み出る男達に、紅い少女が親しげに微笑む。 「わたしはどの道、水火なんです。でも猫羽は、エルフィって呼んでいただけると普段通りです」  竜牙水火と名乗り、年若い外見に合わず落ち着いた物腰の紅い少女に、公家は少しだけ困ったように微笑んでいた。 「竜牙殿が現在、棯家の留守を任されていると伺っておるが」 「ええ。わたしはエルフィ達の義理の叔母にあたるので」 「家を空けなければいけない事情は、いくらかは棯殿からも伺った。竜牙殿も巻き込まれた騒動は一段落したと言うが……幼い子供と二人で留守を守るのは、心細くはないかのう?」  ちょうど金色の髪の少年と養父が自宅を後にした一昨日に、彼らはこの御所に挨拶に来たという。  それは金色の髪の少年が一時期、この御所で生活させてもらったことや、それからも色々と助けを受けていたことの礼のためだったはずだ。  公家は穏やかな顔で少女達を見つつ、じっと公家を見上げる幼女に、気さくに笑いかけた。 「良ければ竜牙殿とエルフィ殿も、しばらくの間、御所に滞在されぬか?」 「……はい?」  紅い少女は、微笑んだまま目を丸くして公家を見返す。幼女は隣で無表情なまま、ぎゅむっと灰色猫を強く抱き締める。
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