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あれ? と。その後呼び込まれた子供達の中で、帽子の少年が不思議そうに首を傾げた。
「竜牙さん、帰っちゃったの? まだ紹介できてないのにー」
「家に病人がいるんだとよ。蒼潤と一度闘わせてみたかったが、残念だな」
「?」
赤い髪の侍が言うことに、入ってきた四人の子供の内、袖を千切った和服に長袴姿で、硬派そうな鳥頭の少年が首を傾げた。
「幻次さん、そいつ、強そうだったんですか?」
「ああ。あの研ぎ澄まされた感じは、隠してはいるが、相当の腕前の剣士と見た」
おおお、と、夕焼け色の髪に黒い目をした剣士は、無表情ながら右手を握り締める。
「これこれ。いくら剣士と言えど、年頃の少女に闘いなど仕掛けるものではない」
剣士の父である公家が、膝に瑠璃色の髪の幼女を乗せたまま、侍と長男を軽く窘める。
剣士の少年の隣では、袴姿の黒髪で黒い目の次男が、難しい顔で座っていた。面立ちは公家のミニチュアのようで、幼女と見た目は近い年代に見える。公家の膝を占拠する幼女を、心なしか厳しく見つめている。
「父様……それではこちらの方が、これからしばらく滞在されるんですか?」
「ああ。ユーオン殿と違ってまだ幼い故、一人は心許ないがのう」
公家はそもそも、紅い少女と幼女を共に滞在させるつもりだったらしい。部屋に集まった子供達を見回し、悩み顔を浮かべる。
「頼也さん。良ければ私、エルフィちゃんと一緒にいます」
公家が何か口にする前に、唯一女の子供である姪の赤い髪の娘が、自分から申し出ていた。
「おお。鶫からそう言ってくれるなら、姉上に突然頼むよりは気が楽じゃのう」
「いいのか、鶫? 子供の世話は楽じゃないぞ」
赤い髪の侍の一人娘である姪が公家の隣に座る。凛とした面立ちながら微笑ましげに、幼女の顔を覗き込んできた。
「自信は無いですけど――ラピの妹だし、頑張ります」
「鶫ちゃんなら大丈夫! 何も心配いらないよ、エルちゃん♪」
帽子の少年が太鼓判を押す。剣士の少年、その弟、帽子の少年と、対面に座る男の子供達はそれぞれ思い思いの表情を浮かべている。始終黙り込む瑠璃色の髪の幼女を、物珍しそうに見つめていた。
「……」
瑠璃色の髪の幼女はただ――ひしっと、公家の直衣を掴む。
「大丈夫じゃよ。ユーオン殿もすぐに慣れておったからのう」
そうして強く力を込める度に、公家は穏やかに微笑み、頭を撫でてくれる生活がしばらく続くこととなる。
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