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 「守護者」と呼ばれ、世界で四人しかいない強大な「力」を持つ秘宝を守る者の一人が、この御所の公家であるとは幼女は知っていた。  対して紅い少女は、その守護者に対抗できる程強い魔族の情報から造られた「魔」だ。赤い髪の娘の警戒心も当然だった。 「今日はエルフィのおもちゃを持ってきたの。ピアス一つじゃ寂しいかと思って」 「……はぁ」  あまりに平和な来訪目的を口にする紅い少女に、赤い髪の娘が拍子抜けしている。  広い庭園の休憩所の一つに腰掛け、持参したいくつかの道具を、紅い少女がそこで広げる。 「――あれ? これ……」  しかし出された小さな三つの道具の二つは、赤い髪の娘には見過ごせる物ではなかった。 「ラピのPHS……と、アンテナ?」  少し前まで、娘の友達が使っていたはずの通信道具。それが壊れて二つの道具に分離され、そこにある不思議に眉を顰めた。  にこにこと紅い少女は、黙って成り行きを見守る。  予想通り、やはり赤い髪の娘は、何故その道具がそこにあるのか疑問を口にせずに、道具に関心を失くす。 「水火……これは、どう使うの?」  PHSの本体とアンテナ。そして後一つは大きな珠玉を填める、巨大な指輪のような形状の道具を、受け取りながら首を傾げる。 「エルフィはあんまり、複雑な道具は得意じゃないのね」  くすりと少女は、アンテナ以外を幼女へ手渡した。 「烙人が直して、改良してくれたから、普通のPHSとしても使えるし。わたしがこっちを持てば、エルフィの声がわたしに届くし、わたしの声や情報もエルフィに届くみたいよ」  元は壊れ物のPHSを持つ幼女に向かい、紅い少女はアンテナの方を手にして嬉しそうに微笑む。 「……?」  持ったことがないものの、PHSとはそういう物だっけ? と、赤い髪の娘が不思議そうに目を丸くする。 「こっちには、ピアスの中の珠を移し変えろと言っていたわ」  残る一つの道具を紅い少女が手に取る。幼女もその意図がわかった。  抱えていた灰色猫のぬいぐるみの後ろ頭を、数個のボタンを外して開け、中から漆黒の珠玉を取り出す。 「本命ができ上がるまでは、しばらくこっちに入れておいて、小さくしておくといいみたいよ」  珠玉を受け取った紅い少女が、巨大な指輪にそれを填め込む。  そして紅い少女の手から僅かな光を受けた指輪は、次の瞬間淡い光を発し……まるで猫の首輪のように小型化していた。
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