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「ほら。よく似合うわよ、エルフィ」 「……」  そして首輪を幼女に着けた紅い少女に、何が起きているかわからなかった赤い髪の娘は呆気にとられるしかない。幼女の魂が宿る珠玉をこれで持ち歩きやすくなったと、説明するのも微妙だった。  巨大な指輪に元々ついていた適当な碧玉を、代わりに灰色猫の頭に戻した。紅い少女が意味ありげな微笑みを見せた。 「ピアスもPHSも。後は、エルフィの特技にも使えばどう?」 「……」  紅い少女が何を言わんとしているか、その場でわかったのは――その時は、現状把握に優れた幼女だけではなかった。 「……その二つの依り代を、何に使うんですか?」  場に唐突に、幼いながら聡明そうな声色が響いた。 「随分――不穏な気の持ち主だな、あんたは」  その声の主に付き添ってきた、常なる守り手の剣士。 「蒼に……悠夜?」  赤い髪の娘が目を丸くして、警戒の様相で現れた二人の従兄弟の方を見た。 「……」  こうなることがわかっていたため、紅い少女は先日も早々に御所を引き上げたはずだ。鋭い力の主達と、対峙を避けた少女がくすりと微笑む。  強い力を持つ守護者たる公家の次男で、八歳にして大人顔負けの術師である子供が事情を話し始めた。 「貴女達が不穏事に踏み込まぬよう、父様の目が届かない時には代わりに、気を配るように仰せつかっています」  場に現れた目的を、子供とは思えない理知的さで、まるで諭すように告げる。  呆然としつつも状況を窺う赤い髪の娘と、隣に座り、黙ったままの瑠璃色の髪の幼女を横目に、紅い少女は悪びれがなかった。 「あら。エルフィが自分を守れるようにするのは、いけない?」  幼女を守るのが己の役目と。術師の子供と背後にいる剣士を、虚ろな紅い目で見据える。 「呪術や剣は良くても、悪魔はダメ? 強そうな呪術師さん」 「道具も力も使い手次第でしょう。貴女達の動向を気にされていたのは、他ならぬ貴女達の保護者の方ですよ」 「……もう。レイアスってば、余計なことを言っていくんだから」  少し前にこの御所で公家と話をしたはずの、基本的に慎重な義兄を思い出し、紅い少女がつまらなさそうにする。  そしてそこで――紅い少女は自ら、その事実を明るみに出す。 「数多なる悪魔との契約者――人形使いの再来は、そんなにも警戒されるべきことなのかしら」  既に公家から子供達は事実を伝えられ、それでここに現れている。きらりと魔性の紅い目を光らせる少女に、厳しい視線を向けた。
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