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 そこですっと紅い少女が間に入り、無表情かつ無言で、完全な敵対を示すように立ちはだかった 「……」  剣士の少年も前に出て、厳しい表情で紅い少女と睨み合う。  そんな緊迫した空気が、その一帯を支配した直後に。 「こんにちはー! 蒼ちゃん鶫ちゃん悠夜君、おっはよー!」  場に響いた、緊張感の欠片も無い声。思わずがくっと姿勢を崩しかけた、公家の子供二人と紅い少女だった。  御所を訪れ、友人達のいる休憩所まですぐ辿り着いた帽子の少年は、睨み合う剣士の少年と紅い少女に不思議そうに笑った。 「あれ? 竜牙さんと蒼ちゃん、何か大事な話し合い中?」 「槶……どう見ても真剣な闘志と殺気だから」  呆れる赤い髪の娘に、うんうん、と術師の子供も強く頷く。 「兄様の闘気はともかく、こんなにあからさまな殺気に鈍いと、槶の普段の危機管理が心配だよね……」  紅い少女への警戒態勢は解かないながら、少し気が抜けた声色で心配げに呟く術師の子供だった。 「水火……」  幼女の譲れない意向を反映している紅い少女。その無機質な後ろ姿に、何も言うことができない。 「……幻次さんの言う通り、相当な剣気の持ち主と見た」  雑念無き「魔」の眼光に、剣士の少年は、見直したような表情で不敵に笑った。  その剣士の高揚を、親友を自称する帽子の少年は見逃さない。 「――ダメだよ蒼ちゃん! か弱くてキレイな女の子相手に!」  こらーっ、と睨み合う二人の間に割って入る。またも剣士二人は、がくっと集中を途切れさせる。 「こんなにキレイな竜牙さんのお肌に、万一傷でもつけたら、蒼ちゃんはこの先責任とれるの⁉ 女の子には一生問題だよ、そもそもか弱い女の子相手に喧嘩を売るなんてダメだよ!」 「って、剣士に男も女も関係ないだろ、槶……」 「か弱い、ねえ……」  自らの武器を携帯型にした腕輪を、もう少しで取り出す所だった紅い少女が、フウと息をつく。 「竜牙さんも竜牙さんだよ! 蒼ちゃんはちゃんと話ができるヒトだから、何か事情があるなら睨まずに話してあげてよ!」 「…………」  深刻さは無いながら、真剣に言っている帽子の少年。キョトンとした様子で紅い少女が見つめ返した。
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