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 そうですね、と、術師の子供も溜息をつくように言った。 「話し合いはまだ終わってません。荒事に訴えずに、お互いの納得のいく道を探しませんか?」 「……うーん……でもねぇ……」  紅い少女はそこでようやく、少し困ったように目を細める。 「説明できるなら苦労しないと言うか……わたしもエルフィも、貴方達にこれ以上言えない圧力が、ずっとあるのよね」  瑠璃色の髪の娘について、彼らに意識させない圧力があること。その障害は直接紅い少女達を侵していないため、そうして違和感を自覚できる。しかし一度素因を刻まれた「神」の力でもあるため、かえって払い除けられない中途半端さだった。 「……――」  紅い少女の言に、術師の子供は、何故か僅かに息を飲んでいる。  そんな空気を物ともせずに、あっさり帽子の少年が尋ねる。 「ところで今日は何で、竜牙さんは御所に? 猫羽ちゃんに会いにきたの?」 「……」  黙り込む紅い少女に、ちょうどいいやと帽子の少年が、懐から何かの包みを取り出していた。 「これ、烙人さんに良かったら渡してくれる? 頼まれてた分、でき上がりましたからって」 「……ありがとう。調子良くなさそうだから、きっと喜ぶわ」  その遣り取りを見て、赤い髪の娘が不思議そうにした。 「そうよね……元は椢の友達とラピの妹を私達に紹介するって、それで二人は御所に来たのよね」  成り行きでその内の一人が御所に留まることになった。それは公家が紅い少女達の保護者と、その前に話をしていたからだと娘は思っていた。 「でもまるで……あのコと猫羽ちゃんは、目的があったみたい。ここで何か、やりたいことがあるような感じ」 「……」 「あのコは猫羽ちゃんを守りたいだけみたいだけど、それなら最初から一緒に御所にいるか……自宅を留守にできないなら二人共断るか、よね」  公家が提案する前から、幼女はそもそも、帽子の少年やその友人達に会いたいと思っていた。それに気付くかのように、赤い髪の娘が真面目な顔で、黙って見上げる幼女を見つめ返す。 「猫羽ちゃんはどうして――ここにいようと思ったの?」 「……」  初対面の公家にその場で懐き、この御所に滞在する結果は、あくまで後押しに過ぎなかった。 「……ツグミ達に、会いたかったの」  本来の目的を幼女は忘れていない。圧力がある中でどうしたものか、今も悩んでいただけのことだ。 「ラピスの友達に……ラピスに、会いたいの……」  瑠璃色の髪の娘の不在を、その友人達に気付かせる挙動は制限されている。それでもそれだけは譲れない事柄を、何とか口にできた。
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