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「……――」
幼女のそのまっすぐな思いに、黙って様子を見ていた術師の子供が、一人でぎゅっと両手を握り締めた。
「ラピちゃんに……会いたい……?」
最も身近な存在。妹であるはずの幼女の不自然な発言を、瑠璃色の髪の娘とよく連絡をとっていた帽子の少年は聞き逃さなかった。
「ラピスを探すの……手伝って、ほしいの……」
幼女のその声が、彼らから消されてしまう前に、
「もしかして猫羽ちゃんも――……魔界に行きたいの?」
瑠璃色の髪の娘の不在より、別の意味で無視できないこと。そのため消えない単語を、帽子の少年が口にした。
ちょっと――と。帽子の少年の口から出された物騒な単語に、赤い髪の娘が血相を変える。
「魔界ってどういうこと? 槶」
「え? ……あれ? ラピちゃんがこないだ、お母さんの所に行くって話してたの、鶫ちゃん達に言ってなかったっけ?」
「それは妹がいるって話の時に聞いたけど……お母様が魔界に行かれたなんて聞いてないわ」
その養母は養女の友人と、帽子の少年を含めて顔見知りだった。
「えー。鶫ちゃんは魔界って何処か知ってるの?」
そもそもその単語がわからなかったらしい帽子の少年は、平和に笑いながら尋ね、剣士の少年も淡々と口を挟む。
「鶫は聞いてなかったのか? ユオンは魔界に母君を迎えに行ったらしいと、父上は仰ってたぞ」
「ええ⁉ アイツこの間来た時、そんなこと何一つ言ってない!」
金色の髪の少年が養父と公家に会いに来た時に、少年と唯一、赤い髪の娘は顔を合わせていたらしい。憤慨するように、気楽そうな男子陣を睨みつける。
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