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「魔界って言えば要するに、悪魔の巣窟、所謂地獄でしょ⁉ 何て所行ってるのよ、お母様もユーオンも、それにラピまで!」
「ええーっ⁉ そーなの、鶫ちゃん⁉」
瑠璃色の髪の娘の不在が、不穏ながらも致命的な方向に決定付けられずに済んだためだろう。彼らは不自然な意識の空白に襲われずに話を続ける。
「そんなの猫羽ちゃんが心配して当たり前でしょう! だから猫羽ちゃん、悪魔の力を借りたいなんて思ってる?」
「……」
流れに便乗して頷いた幼女に、頭痛を抑えるように、片手で頭を抱えた赤い髪の娘だった。
赤い髪の娘はそして、現状に至った問題に立ち返る。
「私達が何か手伝えば、猫羽ちゃんには悪魔は必要ないの?」
しばらく考え込んだ後に、躊躇いつつも幼女は頷いた。
「ラピスに――……帰って来てって、言いたいの」
「そうだよね、鶫ちゃんがそれだけ言うなら、怖い所だよね」
「ユオンはともかく、ラピまで行く必要があるのかって話だな」
瑠璃色の髪の娘と同い年の子供達は、揃って頷いている。
「でも、何かの方法で言うにしても、ラピはそれで帰るかしら?」
「……ツグミ達と一緒なら、できそうな気がする」
生来、幼女は言葉足らずなので、辛うじて瑠璃色の髪の娘の安否が濁される。危うい話が消されないまま綱渡りで続く。
「……どう? わたし達の方の事情は、これで良いかしら?」
「…………」
少し遠巻きに様子を見ていた紅い少女が、術師の子供にくすりと尋ねる。
術師の子供は僅かに目を伏せ、何処か痛ましげにしていることに少女は気が付いていた。
そうした敏い者達の姿を、瑠璃色の髪の幼女は無表情に――最も強く意識を向けながら、感じ続けていたのだった。
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