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 瑠璃色の髪の幼女の指示待ちという紅い少女は、それから程無くして御所を後にしていった。  赤い髪の娘や剣士の従兄、帽子の少年は魔界という所について調べてみると、連れ立って書庫に行ったようだった。 「そうか……お主のことについて、子供達と、早くもそのような話をしたのか」  朝から仕事のあった公家が、ようやく手が空いた頃を狙って押しかける。タイミングばっちりで現れた幼女を膝に、公家は困ったような顔付きで笑いかけた。 「言い難かったじゃろう? 蒼潤と悠夜を襲ったことを、正直に認めるのは」 「…………うん」  公家の膝に両腕を乗せ、頭を置いて引っ付いた幼女は、目を伏せながら素直な心を口にした。 「ツグミに嫌われるかな、と思った……でも、ヨリヤお父さんもユウヤも……わたしがここに来た時から、そのことは知っていたもの」 「棯殿から既に、話は聞いておったしのう」  先日から幼女を新たに子供にした養父は、公家の元を訪れる前にジパング滞在登録も済ませている。なるべく幼女が肩身の狭い思いをしないよう取り計らってくれていた。 「ユウヤはまだ、わたしのこと、許してくれそうにないけど……ヨリヤお父さんが怒らないのは、父さんが話してくれてたから?」  実の子供を、悪魔の憑いた人形に公家は襲われている。  それでも使い手だった幼女を責めずに、受け入れてくれたこと。初対面からその驚くべき現状を感じ、そのため幼女は真っ先に公家に懐いた。  しかしこの公家の、そうした寛容さの理由まではわからなかった。 「それもあるが……お主の姿を見れば、ただ寂しかっただけの、ユーオン殿と同じく直向きで不幸な子供であることはわかる。それはおそらく、悠夜もわかっておるよ」  責められるべきは幼女自身ではなく、幼女をそこに追い込んだ者達だと痛ましげにする。 「……どうしたらユウヤは、許してくれるかな?」  術師の子供が幼女に向ける、子供らしからぬ丁寧な口調。それは拒絶と感じられて、悩ましげに公家を見上げる。  ある目的で、赤い髪の娘達だけでなく、その術師の子供と幼女は一番話をしたかった。そんな思惑を知る由も無い公家は、再び困ったように微笑む。
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