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 公家の膝に上半身を任せながら、俯いてしまった幼女の頭を公家が黙って撫でていた時に。 「……父様。少し――ご相談しても良いでしょうか?」  暗い障子の外から、躊躇いがちな術師の子供の声がかかった。ぴくりと幼女は反応し、公家の膝に両手をついて、体を起こして障子の方を見た。 「おお。ちょうど、悠夜のことも話しておったのじゃよ」  公家も嬉しそうに、声のした方向を見る。 「先客がおるが、それでも大丈夫かのう?」 「……はい。その方にも関わることだと思いますので」  だからこそ、幼女が父の傍にいると承知した上で訪室した術師の子供は、すっと障子を開けて静かに部屋に入って来た。 「……」  じっと、不思議な思いで術師の子供を見つめる。まさか向こうから来るとは思わなかったのだ。術師の子供は不服そうながら、憂い気な視線で応える。  何となく公家の膝から体を起こし、傍らでちょこんと座り直す。その前で術師の子供は、公家の対面へ正座して落ち着く。  術師の子供は訪室の目的を、少し俯きながら切り出していた。 「兄様達が――魔界について調べておられます」 「――ほう?」 「父様はご存じないと思いますが、僕も知っている兄様達のご友人が……ユーオン君と一緒にそこにいると伺ったんです」  術師の子供から出た意外な単語に、公家は目を丸くしつつも、 「幻次から聞いたことはあるが……棯殿の最初の養女で、猫羽殿の姉君という方のことかのう」  何故か厳しげな声色となった公家に、術師の子供も目を伏せる。 「ユーオン君が魔界に行ったということは、僕も兄様も父様からお聞きしましたが……兄様達は、その方のことを心配しています」 「……」  術師の子供が俯く理由を、公家は悟っている。憂い気に俯く実子の様子を、悲しげに見つめた。  そして公家は躊躇いがちに……それも幼女の保護者から、ちらりと聞いていた話を静かに口に出した。 「……棯殿はこの度、大切な養女を亡くされたと伺った」  それが子供達の友人のことだと、確信した哀しみと共に。 「その件は、此度の事変に本質的に関わりは無いと言うが……ユーオン殿も竜牙殿も、それで沈み込んでしまわれていると、わしは聞いておる」 「……――」  辛そうに口にする公家の傍らで、幼女は衝撃を受けた。公家がこれまで、その事実に踏み込まず浮かべないようにしていたので、知っていることを知らなかった。思考の止まった頭で公家を見上げる。
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