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 公家は改めて、実子の方を見つめた。 「不審な化生による霊障は、確かに解除する方法を考えた方が良いが。わしに何か手伝えることはあるか? 悠夜」 「……父様……」 「蒼潤や鶫が、友人を失ったことに向き合えないようにされている方が残酷じゃろう。誰にとっても……出会いがある限り、別れは避けられぬのじゃからな」  最早実子が、その解除に関われない状態であるなら、代わりに自身が動く。明らかにそう示している敏腕な公家に、術師の子供は、それは……と、再び辛そうに目を伏せた。 「……ねぇ」  神妙に話を聞いていた幼女は、話題を変えるように、不意にその問いを口にした。 「ヨリヤお父さんも、ずっと言わないでいることがあるのに……ラピスのことは、言った方がいいの?」 「……――」  それはあくまで糾弾ではなく、ただ不思議な思いで幼女は尋ねる。  つい最近、幼女が関わっていた事変の中で、公家の子供達を可愛がっていた旧い仲間が公家に背を向けた。仲間は幼女の兄の少年に敗れ、最後は行方不明となったと教えられている公家は、それを子供達に話していない。 「……そうした方が、あやつも帰ってきやすいじゃろう」  どちらかと言えば、自身や自身の子供達のためにではなく、旧い仲間のためである沈黙。帰りたいだろう仲間に、躊躇いがちに答えた公家だった。 「…………」  なるほど、と――公家の厚意自体には気付いていた幼女は、納得して頷いた。  そうした話を、ただ複雑そうに、公家の実子は見守っていた。 +++++
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