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 術師の子供は部屋の灯りの近くに座した後で、灰色の猫のぬいぐるみとPHSの内、まずはぬいぐるみを手にとった。 「こちらの依り代はまさに、使い魔向きだと思います。自力で動けそうだから、簡単なお使いなら可能でしょうし、見たもの、聞いたものの情報を主人に送ることもできると思います」 「――……」 「PHSは少し特殊ですね。伝波系の悪魔を探した方が良いと思います。上手くいけば、アンテナを持った人や主人である貴女の声をPHSから発信させて、預けた人に伝えることもできそうですし。アンテナからの情報や、貴女が見たものを画面に映すことできるかもしれません。普通にPHSとして、槶とか、他にPHSを持つ人とお話もできると思います」 「……――……」  幼女はまさに、ぽかーん……としていた。個々の道具の特性を考えて、使い道と操作法まで教えてくれる術師の子供を、まじまじと見つめる。 「…………」  ただひたすら、尊敬。きらきらした目で術師の子供を見つめていると、何故か不服気にそっぽを向かれてしまった。 「……だから、道具も力も、使いようなんです」  憧れを満面に浮かべる幼女にぬいぐるみとPHSを返しながら、冷静に言う術師の子供だった。 「でも何で……悪魔、呼んでいいの?」  根本的な疑問に立ち返った幼女に、術師の子供は少しバツが悪そうにする。 「どうせ呼ぶなら、害の少ないものにしてもらいたいですし。思っていたより貴女は、理非の判断もできそうですし……貴女に何かあれば、ユーオン君が悲しむと思いますから」  悪用さえしないなら、自衛の手段を持つにこしたことはない。聞分けの良い幼女の姿に、術師の子供は少し見方を変えたようだった。  そして――と。  術師の子供が物憂げな顔で、対面に座る幼女を改めて見た。指輪のような形の首輪をつけた自身の着物姿が、術師の子供の黒い目に映る。 「貴女がユーオン君と同じような、直観の持ち主なら……あの、兄様達の記憶を奪うヒトへの対抗策はわかりませんか?」 「……――」 「貴女はあのヒトのことを、抜け殻だと言いましたが……本当に、あのヒトが何者なのか、僕にもさっぱりわからないんです」  その空ろな相手は、本質そのものが無いのだと――  無意識の領域、対象の本質。心霊を見ることを主とする霊的な感覚の持ち主には天敵に近い相手だと、幼女は何となく納得する。
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