13/18

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/165ページ
 そして術師の子供が、再び顔を上げた時には――  ある決意と共に、凛とした力強さを深い黒の目に湛えていた。 「ラピさんがもし、思い直してくれたら……あのヒトの霊障も、解決できることなんですよね?」 「……?」 「もしかしたら――魔界からラピさんを呼べるかもしれません」  術師の子供が持つ呪いの力。呪術的な知識と、悪魔の使役に長ける幼女の力を合わせれば、悪魔に魂を奪われた相手に働きかけることができる。  それを確かに、その深い黒の目は、幼女に訴えかけてきていた。  それをまるごと受け止めた幼女は、時間が止まったように、呼吸すらも忘れて尋ねた。 「ラピスに……会えるの?」  術師の子供をじっと見つめながら、息を飲んで尋ねる。 「確証はないですけど……試してみる価値はあります」  そして真剣な顔の術師は何故か、場所を変えましょう、と。幼女を連れて、その空虚な和室を後にしたのだった。  術師の子供と瑠璃色の髪の幼女が、かなり苦労して辿り着いた場所は、何故か御所の一角の屋根の上だった。 「……寒い……」  ぶるりと、着物の袖に両手を隠して呟く幼女に、 「使って下さい。屋根が寒いのはわかりきってますから」  行き道のいったい何処で入手したのか、羽織れる物をあっさり手渡す行き届いた相手。幼女はまたも、ぽかーん、と尊敬の眼差しを向ける。  そしてもう一枚、かなり大きな薄布を、術師の子供が畳まれた状態から広げた。 「これに、貴女が知ってる悪魔召喚の方陣は描けますか?」 「……うん、多分」  術師の子供から墨と筆を手渡される。何処まで用意がいいのかと、幼女はただただ感服する。 「ちょっとゴツゴツしてるから、時間かかると思うよ……」  瓦の屋根に布を敷き、地面に落書きをするように、円陣に近い模様を描き始めた。 「僕も皆に気付かれない結界を考えますから、慌ててもらわないで大丈夫です」 「……それ、ユウヤがすると、しんどいと思うよ」 「?」  地面に向かいつつ、幼女は術師の子供をちらりと見上げる。 「気付かれないようにするの……多分、わたしもできる」 「え?」 「それより、こっちの魔方陣……ユウヤが使ってくれた方が、いいと思う。ユウヤは人間の血が沢山あるから、できると思う」
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加