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 その屋根に来た目的を、幼女は行く道で説明されていた。 「魂呼(たまよび)っていうのと、悪魔召喚、一緒にするんだよね?」  どちらも魔道ではある、呪術と魔術の合わせ技。それを提案してきた相手に、心強い思いで尋ねる。 「ええ。貴女が元はラピさんなら、それ程強い縁のある媒介はありません。魂呼に加えて、魂鎮(たましずめ)の対象としても適用できます」 「それ……二人でしたら、わたしは一つでも、違うものがくるかも……」  いずれの媒介としても、幼女の躰を同時に使い、二つの魔道を起動する。そうして強い縁を持つ相手を呼ぶという案に、 「それは確かに、僕が両方するのが理には適いますけど……」  基本的に体力に乏しい術師の子供は、それでは本当に、それしかできなくなる、と不服気な顔をする。 「結界もしんどいよ……わたし、ヨリヤお父さんには絶対に、気付かれないようにできるから」 「……?」  髪を束ねる黒いリボンを触りながら、確信を持って言う。幼女が一時期、「忘却」に触れ、「神」の素因を書き写された結果がここにある。  周囲に気付かれないかを一番懸念していた術師の子供は、不服気でありながらも渋々頷いてくれた。  二つ以上の魔道。しかも未経験の別分野の術を、同時起動することも十分に可能な、優れ過ぎた天才術師の子供だった。  魔方陣の準備が整うと、その中心に幼女をしかと立たせ、術師の子供が最終確認に入った。 「それでは――そちらの気配隠しも、大丈夫ですか?」 「……うん。誰ももう、多分覚えられない」  え。と、聞き捨てならないことを口にする幼女を、術師の子供が怪訝な目で見つめる。幼女の直観――気配探知が及ぶ範囲で、黒いリボンが持つ「力」の介入を始める。手段を選ばない非道であることを、幼女もわかっている。 「ラピスに会えて、話ができたら……わたしも、どうするのか決められると思う」  公家にしみじみと温かく諭されたことで、幼女も迷いを持ち始めている。  だから顔は浮かなかった。それ以上術師の子供も糾弾できないようだった。
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