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「うわー花の御所だぁ、頼也君と幻次君会いたいなぁ♪ でもさすがに十五年前の謎の偽少女ナギなんて、もー二人とも覚えてないだろーなぁ~」
「……父様達と、知り合いなんですか?」
瑠璃色の髪の娘によく同伴し、娘の友人とは顔見知りだったその養母。親同士の面識は今回、養父と公家が会ったのが最初なのだ。
「うんうん、あたしが真面目に天使してた頃はねー。でもま、天使として会ったことはほとんどないし、結局見知らぬ他人って言うしかないかなぁ?」
そもそもその養母は決して、ここまでテンションが高くなかった。本来なら穏やかで静かな微笑の似合う女性の変貌ぶりに、術師の子供はそれ以上言葉が見つからないようだった。
代わりに、ようやく衝撃を受け止めた幼女が問いを発する。
「……あなたが、わたしの母さん?」
「お? そんな君は、ティアリスの見も知らぬ新たな娘ちゃん?」
楽しげに幼女を見下ろし、女がふんふん、と様子を窺う。
「この躰は確かに、その躰の育てのおかーさんのだけどねぇ。ちょっとワケありで、今はあたしが使ってて、君の母さんには眠ってもらってるよ」
「…………」
幼女はまじまじと、毛皮の襟巻が目立つ女の全身を眺めた。
「……ラピスを連れてったのは、あなた?」
兄と父が助けにいかなければいけないはずの養母。それを縛る真実を――全貌ではないが、ある程度を感じ取った。
女はふふふ、と、勘の良過ぎる幼女に楽しげに微笑む。
「ラピちゃんに命をあげたのは、あたしの部下の悪魔なのね。だから魂はあたしに献上してもらいました、わかる?」
「母さんは……ラピスを助けたくて、あなたの言うことをきくの?」
「最初のキッカケはその通りかな。天使の情けでラピちゃんは成仏させてあげたけど、残滓でいいから傍にいてほしいって、ティアリスは言うから」
そしてそれを、養女も受け入れたのだと、女は伝える。
それなら、と、幼女は心を決めた目で女を見上げた。
「ラピスを返して、母さん。兄さんと父さんはどうしてるの?」
「あー。ユーオン君は引き取ったけど、レイアス君は立入禁止。だってあたし、余所にダンナがいる身なんだもーん」
「兄さんは――母さん達のこと、どう思ってるの?」
その質問に、女が少し考えてから、答を返そうとした瞬間。
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