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「多分……ツグミはもうずっとあの黒いヒトの介入を受けてるから、わたしが更に介入するのは無理みたい」 「ということは……やっぱりそれは……」 「わたしと水火がラピスから受け取った――記憶を奪う神様の力。都合の悪いことは全部、気付かれた時に忘れてもらうの」  それは御所一帯くらいなら、自在に展開できる。あくまで依り代の黒いリボンがあって、それを「神」の素因を持つ者が使うなら、の話だ。 「最悪ですね……貴女の直観なら、誰が何を気付いたかすぐにわかって、その場で全部抹消ですか?」  だからこそ悪魔召喚の儀を、並み居る術師から隠せた恐るべき幼女。真っ当な感想を術師の子供が思わず呟いている。 「そんなに細かいことはわからないよ……それにユウヤみたいな、神様みたいに強いヒトは、多分ユウヤだけ狙って頑張らないと効いてくれないし」 「それ……僕の記憶も消せるって言ってますよね……」  ますます警戒を強める術師の子供に、何と返すべきかと悩む。それでなくても距離があるのに、これ以上呆れられたくなかった。 「ラピスの中にいた神様はできたと思うけど。わたしは水火と兄さん以外から記憶をもらったのは、昨日が初めてだよ」  この力はそもそも普段は使わないと、幼女側の事情を説明する。 「あんまりこれやると……わたしも神様になっちゃいそうだし」 「……でもユーオン君達からは、記憶を奪うんですか?」 「だって――二人共すぐに、怖いこと考えるから」  ……と、少し俯いた幼女に、術師の子供が首を傾げた。 「考える心は変わらないけど、考えてる時間は少なくしたいよ」 「それもあまり、褒められたことじゃありませんけど……何だか、切実そうですね」  幼女の兄の苛烈さや、紅い少女の不穏さを思い出したのか、少し納得したように頷く術師の子供だった。 「でも結局……悪魔召喚は成功したけど、魂呼は不発でしたね」  ぽつりと、残念そうに口にした術師の子供に、 「ううん? ラピスも一緒に、あの時いたよ?」  そう返すと、え? と、術師の子供が思わず、立ち止まりかけた時だった。
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