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「君達――揃いも揃って、何処へ行くんですか?」  京都の南の平原に続く川。元は瑠璃色の髪の娘と友人達が、何度となく遊んだ広い川原で。  その抜け殻という黒い女は、気配の一つすら感じさせず、一行の行く手に立ち塞がっていた。 「イタイケな子供があまり危ないことをすると、大人としては、止めざるを得なくなっちゃうんですけどね?」 「って……スカイさん、ですか?」  赤い髪の娘が驚いたように発した声に、他の子供も頷く。  そこにいる相手は、この一行の誰もが見知った存在だった。 「あいつ――この前来た旅芸人一座の、営業の奴か?」 「あー。今休暇中だから、ジパングでまた良い公演先が無いか探すって言ってたよー」  先日にその、黒い女を案内していた帽子の少年が、思い出したように手を打った。  そもそも、その黒い女の影響を何とかするためにも、幼女と術師の子供は動いていた。 「……!」 「……」  そのため同時に、現れた黒い女に表情を強張らせる。 「ダメですよー、イタイケな子供さん達。こんな京都の外まで、子供さん達だけで外出しちゃ。悪いこと言いませんので、禍事が起こらない内にお家に帰りましょ?」 「……あんたが一番、禍々しく見えるのは気のせいか?」 「って蒼ちゃん⁉ 年頃の女のヒトに何てことを!」  あはははーと、黒い女が営業スマイルで笑う。 「年頃と言っても、この髪が黒くなる前は子持ちでしたけどねぇ。まぁ子供っぽいっちゃ子供っぽいので、否定はできませんが」  以前と現在の姿は違うとほのめかす女の躰は、瑠璃色の髪の娘の母とはいえ、姿は似ても似つかない。誰も女が娘の血縁とは思いもよらないようだった。  今までこっそりと記憶に介入していたはずの黒い女は、改めてそこにいる目的を口にした。 「君達今から、日帰り魔界探検とか行く気なんでしょ?」 「――⁉」  幼女のために黙って出てきた赤い髪の娘達の目的。それを何故知っているのか、娘は警戒の顔をするが、 「ダメですよーそういうの、本気で死んじゃいかねませんよ? 君達に何かあったら、親御さんとか悲しむと思いますよ」  知られている不可解はともかく、忠告は真っ当な黒い女。元々お目付け役として迷いつつ同伴した娘は言い返せない。 「ラピやユーオンもいる所だろ? 何とかなるだろ」 「うんうん。どんな所でも、そこなりの良さがきっとあるよねー」  至って気楽な男子陣に、少しだけ赤い髪の娘も頭を抱える。
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