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追い付いた年長組の、背中に隠れるようにいた術師の子供が、くいくいと兄の袖の無い着物を引っ張った。
「注意して下さい、兄様……あのヒトは危ないヒトです」
「悠夜?」
硬い顔付きの弟の警告が正しいと示すように、そこで黒い女は――腰に据えた飾り気のない長剣を抜き放った。
「言ってきかないコ達は、力ずくで止めるしかありませんか?」
にこりと、あくまで笑いながら、先頭にいた剣士にその切っ先を突きつけた。
「……」
ひゃああ、と隣で帽子の少年が驚く中で、剣士の少年は至って冷静に、自身の刀に手をかける。
「俺にはあんたは、邪気持ちに見えるし……悠夜まであんたを敵認定してるなら、遠慮はいらないな」
「そうこなくては。剣士ならお互い、剣で語りましょうよ」
にやりと不敵に微笑んだ女を前に、剣士の少年は背後の者達に、下がれと一言だけ――僅かに笑いながら口にした。
「兄様――」
「ソウ……」
それは、剣士の少年を置いていくわけがない一行への足止めだ。
黒い女は彼らを傷付ける気はないと、子供組はわかったものの……これ以上どうしようもなく、立ち止まるしかなかった。
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