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 何気無くも切実な命綱。それを一行が相談しているような中で。  普段なら、こうした時には、 「それってまさにスリルとサスペンスだね! っていうかもし本気で扉が消えちゃったらどうする⁉ 僕達魔界暮らし⁉ 魔界ってお水とか空気とか大丈夫かな⁉」  などと、想像力がひた走る帽子の少年。しかし今は始終淡々と、覇気の無い様子で紅い少女と幼女――元は瑠璃色の髪の娘の居室をぼけっと見回していた。 「……クウ、大丈夫?」 「え? あ、ごめんね、大丈夫だよ猫羽ちゃん」  あはは、と笑う相手に、幼女もまた胸の痛みを思い出していた。  その様子を横目に、術師の子供が、異大陸仕様の室内を珍しそうに見て回る兄達の後ろで手招きしていた。 「さっき、あの川辺で、二人共何処へ引っ張られたんですか?」  帽子の少年の様子が変わったのはそこからだ。術師の子供は当然の如く気が付いている。 「うん……あのヒトと、ラピスのお母さんがごっちゃの、ヘンな所だと思う……もうお母さんはいないけど、記憶だけは残ってる」 「貴女はともかく、どうして槶まで?」 「あのヒト、クウのこと、気に入ってる」  読んで字の如く、それで女の気が満ちる所に入り込めたのだと伝える。 「槶は何があったかは覚えてないみたいだけど……それでも、あんなに凹んじゃうなら……」  いつも通りに笑っている帽子の少年。しかし確実に何か大きな衝撃を受け、記憶を消されても無意識から消せ切れないでいる。それを察している術師の子供が、痛ましげに帽子の少年を見つめる。 「魔界でラピさんがいないってわかったら……大丈夫なのかな」 「……悪いことになるとは、限らないよ」  突然魔界などに行く目的。そこにいる者に会いたい幼女に、付き添う兄達の後ろ姿に、術師の子供は項垂れている。  幼女は傍目からは、気楽そうに見えるだろう。碧い目の灰色の猫のぬいぐるみを抱えながら、強い意思で思いを口にした。 「近くに行ければ――絶対わたしはラピスを見つける」 「……」 「ラピスがどうするかはわからない。記憶も無いかもしれない……でも、ラピスの魂は確かに母さんの所にいる」  先日の召喚の際、それだけは確信を持てた幼女だった。
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