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「猫羽ちゃん、これから何処行こう? ここってラピちゃんのお母さんのお城なんだよね?」
「うん……でも、気配が多過ぎて、母さんが紛れちゃってる」
広大な城中に、早速幼女は気配探知のアンテナを伸ばしてみたが、悪魔などの力の主が集まるのが主に下層とわかっただけだ。一つ一つの気配を、普通より情報多く感じてしまう性質のため、かえって許容量を超えてしまった。
「ここに長くいたら、見つかる心配はないですか?」
「ここは上の方だけど、元々あんまり、ヒトはいないみたい。ラピスみたいな気配と、いくつか悪魔と、悪魔じゃないヒトの気配が近くにする……」
え。と、あまりに早々の目標の気配に、全員が目を丸くする。
「ラピちゃん近くにいるの? 猫羽ちゃん」
「……似てるけど。違うかもしれない……」
その感想には様々な意味があった。以前通りの瑠璃色の髪の娘はいない。世界を超えてすら続く制限に、幼女はそれ以上口にできない。
「ヒトが少ないなら、今の内に早く行かない? それがずっと続くとは限らないでしょ」
「悪魔の一人や二人、会ってみたいけどな」
「兄様……ジパングにも悪魔はいると思うので、それはまた、次の機会に」
そして一行は、ゆっくり歩き出した幼女を囲むように、数歩だけ遅れて後に続く。
「そう言えば――」
声は小さく潜めながらも、思い出したように赤い髪の娘が、幼女の後ろ姿を見つめた。
「ユーオンはここにはいないの? 猫羽ちゃん」
「……わからない。いるとしたら……下の方なのかな」
その気配は元々弱い上、やはり紛れてしまっている。ちらりと振り返り、幼女自身も残念な心で答える。そう、とだけ、赤い髪の娘も軽く息をついていた。
先日召喚した悪魔の養母が、確かに引き取ったと言っていた金色の髪の少年。幼女も瑠璃色の髪の娘の次に気になり、探していたものだった。
その私室の扉を開けて、出た先は中空で方形の回廊だった。
「うわ、開けっぴろげですね……下の方から見えないように、気をつけて通らないと」
「でも誰も、気付かないようになってるんだろ?」
「そうですけど……気をつけるにこしたことはないと思って」
あくまで豪胆な剣士の兄に、慎重な術師の子供は少し苦笑う。
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