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短刀を突きつけた相手の同伴者が、反撃に出れば面倒だ。その銀色の人影はそう感じたようだった。
「……さっさと消えろ。侵入者には……俺は興味ない」
「……え?」
あくまで人影の目的は、帽子の少年が追いかけていた仔狐の保護だけだった。
「次に現れたら、その時は――……殺す」
それを再び侵すのであれば、決して容赦はしない。
帽子の少年だけでなく、他の同伴者にもその後、怜悧な赤い眼差しを一度だけ向けた。
「――槶! 大丈夫⁉」
パタンと、出てきた扉の奥へと人影が消えた数瞬後に、赤い髪の娘が駆けつけていた。
手にしていたその武器……遠隔での攻撃も可能な銃を、帽子の少年に何かあればすぐに使うべく、駆けてくる傍から構えていた。
「鶫ちゃん、槶、とりあえず退こう! こっちに戻って来て!」
帽子の少年の無事を確認し、武器を収めた娘の姿も確認し、術師の子供が最初に入ってきた部屋の扉を開けて叫んだ。
「槶、動けるかい⁉」
「……大丈夫だよ、悠夜君!」
赤い髪の娘に手を引っ張られ、少しの間だけ呆けながらも、すぐに我に返ったように帽子の少年が応える。
「一旦退却だな。これ以上深追いすると、さっきの奴と本気で戦闘になる」
術師の子供と幼女を守るべく、そこに残っていた剣士の少年は、あくまで冷静に状況を見て口にした。
「多分勝てない相手じゃないが――あの仔狐を守るためなら、アイツ、命がけで俺達を殺しに来るぞ」
「兄様……」
「…………」
それだけ真っ直ぐな剣気を持つ敵がそこにいる。事も無げに見切った剣士の少年の言葉に、子供二人は顔を見合わせた。
「……まさか、さっきのヒトって……」
「…………」
半ば確信を持って、術師の子供は幼女を怪訝そうに見ている。
幼女もうむむ、と……その違和感にひとしきり頭を悩ませる。
「……あ、そっか」
忘れてた、と。そこでやっと、ある呪いの存在を思い出した。
「うん……あれ、ユオン兄さんだ」
ちょうど、赤い髪の娘と帽子の少年が帰り着いたその時に、術師の子供以外が驚愕する事実をあっさり口にしたのだった。
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