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 それでも――と、赤い髪の娘は、その不服を追及する。 「ちょっと小動物追いかけただけで、普通短刀まで抜く?」 「……うん。兄さん、変わったと思う」  うんうんと納得する幼女。しかしそれは―― 「いつもの剣も抜かなくて……一番初めの時に殺さないなんて、キラ兄さんらしくない」 「って、猫羽ちゃん……それは……」 「キラ兄さんは敵なら、わたしだって殺そうとしたよ……でも、今は違うんだね、兄さん」  密かに感動してしまっていた。そんな幼女に、大きく肩を落とした赤い髪の娘だった。  まぁ、と紅い少女が口を挟む。 「何を守ろうとしたかは知らないけど、次は本気で来るでしょうね、ユーオンならね」  いいの? と、紅い少女は幼女を見つめる。 「ユーオンだけ結界から除くことはできないの? 猫羽ちゃん」 「そうだよね。僕達だってわかったら、抜刀はないよね?」 「…………」  現在彼らの侵入に気付いたのはその相手だけだ。当然の提案なのだが、幼女の顔は曇る。 「できるけど……わかったら帰れって、凄く怒ると思う……」  やっぱりね、と、くすりと紅い少女が笑った。 「そうよね。どちらにしても、命がけで追い返すわね」 「でも、事情を説明したらユーオンだってわかるでしょ?」  ラピに会いたいだけなんだから、と憮然と言う赤い髪の娘に、 「簡単に会える所にいないなら、多分止められるよ、鶫ちゃん」  尚更困って黙り込む幼女に、術師の子供が助け舟を出した。 「そうですよね? 猫羽さん」 「……うん。兄さんを止めて……あの仔を捕まえないと……ラピスには会えないと思う」  一つ一つ、口にできることを探すせいか、一見脈絡のない内容になる。 「あ、やっぱり⁉ 何だかあの仔、捕まえてって訴えかける何かがあるんだよね!」  生き生きと帽子の少年が、幼女には考えもつかない方向で後押しをする。 「ダンジョンのお約束だよね! 次の場所に進むには何らかの試練かアイテムが必須っていう!」 「そういうモンなのか?」 「そんなんで小動物怖がらせたわけ? 槶」 「だって可愛いよ、ちっちゃいよ、もふもふだよ! みんなは抱っこしたくならないの⁉」  すっかり調子を取り戻した帽子の少年に、術師の子供が苦笑しつつ話題を戻した。 「どうしますか? これ以上……深追いするべきでしょうか?」  その場合には、相応の危険が伴うと示すことも、真面目な声色で諭しながら。
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