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着替えが終わり、座布団に座った幼女は、落ち着いたせいか、こくりこくりと睡魔に襲われ、船を漕ぎ始めていた。
「ちょっと疲れちゃった? もうお休みする?」
「んー……」
いやいや、と、目をこすって睡魔を追い払おうとする。しかし珍しく早起きした日だったこともあり、敗色濃厚だった。
「ツグミともっと……お話したい……」
言いながら既に胡乱な声色に、赤い髪の娘が温かく笑う。子供用の布団を出そうと立ち上がっていた。
娘が寝床を用意しようとしてくれていると、それはすぐにわかった。
「ねぇ、ツグミ……」
「?」
「ツグミと……一緒に、寝ていい……?」
着物の裾をもう一度掴む。眠気で潤んだ目で見上げるのは、正直なところ、普通に心細いからだった。
「いいよ? ちょっと待ってね」
二つ返事で微笑んだ赤い髪の娘は、自身が使う寝具を出し、一緒にそこに横たわってくれた。
知らない御所で、優しい娘。僅かな不安はすぐに、柔らかな掛物に包まれていった。
「……あったかい」
見守るように横向きでいる娘の前で、安らぎがこみ上げてくる。
「でも……うたないでね……」
「?」
むにゃむにゃと寝言のように、最後にそれだけ口にする。以前にこの娘に会った時の、その記憶だけが赤い天使の中にあった。それももう怖がることはない。
最早天使ではない人間の幼女は、すぐに眠りに落ちていった。
灰色の猫のぬいぐるみを抱えたまま、眠りに落ちた瑠璃色の髪の幼女の寝顔に、赤い髪の娘が微笑みながら息をついた。
「本当に、ラピにそっくり」
束ねたままだった髪の黒いリボンをほどき、ひとまずぬいぐるみに巻き付けてくれる。
「ラピがジパングに来た頃も、これくらいだったかな?」
その頃はこの、無表情でも穏やかな子供より、はっきり棘を持っていた危うげな友達。それを思い出してか、懐かしそうに微笑む。
一時期生活を共にした少年や、幼い頃からの友達が最近どうしているのか、赤い髪の娘はあまり聞けていない。
「猫羽ちゃんが起きたら……」
だから娘も子供に、色々話を聞きたいと思っていたようだが、
「……起きたら、何だっけ?」
あれ、と。不意に途切れてしまった言葉に、自身で目を丸くする。
「…………」
そうした様子を、その寝所から中庭を挟んで対面に位置する場所で、縁側から見つめる者の姿があった。
「……大丈夫なのかな……」
瑠璃色の髪の子供と外見は年が近い黒髪の子供。名立たる術師の公家の次男である、天才と呼ばれた術師の子供が、物憂げに佇んでいたのだった。
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