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「───失礼します」
「───おい、葉!翠子さんに失礼だぞ!」
父親の制止の声も聞かずに客間を飛び出した
───冗談じゃない
挨拶なんてしたが最後、搦めとられて身動きが取れなくなるのは目に見えている
どうしてどいつもこいつもオレの邪魔ばかりするんだ!
腹立ち紛れに法事の行われる大広間に入る手前で見慣れない男が立っていた
病みやつれてはいるが、元々はいい男なんだろうと男のオレから見てもそう想像させるほどの美丈夫だった
右腕を吊っているため片腕が通せなくてスーツの上着を肩にかけた状態なのが痛々しい
だけど次の瞬間、同情は怒りに変わった
「葉くん、こちら可奈ちゃんの───」
こいつが…
こいつが、可奈子を───
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