ep.8 内緒

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「知ってるよ。何で部屋に入れてるんだよ。」 「合鍵なんて作るの、双子の中では常識なんだよ。」 「それ非常識だろ。」 鍵をぶらぶら見せながら、そいつは俺にじりじりと近づいてきた。色気のあるやつって、これだから厄介なんだ。 「まあまあ。それより、風邪引いちゃってるんだ。前のが影響してるのかなあ。」 少し不気味な笑みを浮かべながら、そいつは部屋全体を見回した。 「前って…あ!お前この部屋盗聴でもしてんのか!」 「ほらほら、そんな大きい声出したら、隣の人びっくりしちゃうでしょ。それに体にも良くない。早く寝て寝て。」 俺の肩をしっかりと掴み、ベットにゆっくりと押し倒した。布団をかけて、傍で肘をつきながら俺を見つめてきた。 俺の体は今、風邪の熱で熱いんだ。決してこいつのせいで熱くなっているわけではない。 「まじでいいかげんにしろよ。何でこんな…」 「俺がね、指示したんだよ。」 「は?」 「だーかーらー、隆に“自分の彼氏犯してみろ”ってな、はは。」 何だよ、それ。それで隆は… だからあんなに泣いてすがって、何回も謝って… 「いやあ、お前抱いた後、あいつ俺に電話して来て、超テンション低いの。そのくせ、“とろけてた”なんて抜かすから詳しく聞こうと思ってんのに電話切りやがるし。」 「とろけてたって俺が?」 「そうなんじゃない?てか、君しかいないじゃーん。」 確かに今までの感じとは違ったし、道具とかあんま使ったことなかったし… 「随分と、良かったんでしょ?」 「あんなのされたら誰だって…」 「君さ、本当はそっち側なんでしょ?」 「は?違うし。」 全部見透かされる。そう思った。隆には何をされてもいい、こいつにだけは何もされたくない。 そのはずなのに、妙に挑発する目線に興奮しそうになったことは、隆には内緒にしておくことにしよう。 「明らかに抱かれる側の顔してんのに、何隆のこと翻弄してんの。ウケるんですけど。」 「勝手に言ってろよ。もう寝る。てか、何しに来たんだよ。」 「たまにね、ちょくちょく来さしてもらってるんですわ、実は。」 「最悪な兄貴だな。全然似てないし。」 二卵性でも色々似ているとこってあるんじゃないのか。そう思ったら、隆にもこいつと同じ血が流れているのかと脳裏に過って、少しだけぞくぞくした。
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