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「知ってるよ。何で部屋に入れてるんだよ。」
「合鍵なんて作るの、双子の中では常識なんだよ。」
「それ非常識だろ。」
鍵をぶらぶら見せながら、そいつは俺にじりじりと近づいてきた。色気のあるやつって、これだから厄介なんだ。
「まあまあ。それより、風邪引いちゃってるんだ。前のが影響してるのかなあ。」
少し不気味な笑みを浮かべながら、そいつは部屋全体を見回した。
「前って…あ!お前この部屋盗聴でもしてんのか!」
「ほらほら、そんな大きい声出したら、隣の人びっくりしちゃうでしょ。それに体にも良くない。早く寝て寝て。」
俺の肩をしっかりと掴み、ベットにゆっくりと押し倒した。布団をかけて、傍で肘をつきながら俺を見つめてきた。
俺の体は今、風邪の熱で熱いんだ。決してこいつのせいで熱くなっているわけではない。
「まじでいいかげんにしろよ。何でこんな…」
「俺がね、指示したんだよ。」
「は?」
「だーかーらー、隆に“自分の彼氏犯してみろ”ってな、はは。」
何だよ、それ。それで隆は…
だからあんなに泣いてすがって、何回も謝って…
「いやあ、お前抱いた後、あいつ俺に電話して来て、超テンション低いの。そのくせ、“とろけてた”なんて抜かすから詳しく聞こうと思ってんのに電話切りやがるし。」
「とろけてたって俺が?」
「そうなんじゃない?てか、君しかいないじゃーん。」
確かに今までの感じとは違ったし、道具とかあんま使ったことなかったし…
「随分と、良かったんでしょ?」
「あんなのされたら誰だって…」
「君さ、本当はそっち側なんでしょ?」
「は?違うし。」
全部見透かされる。そう思った。隆には何をされてもいい、こいつにだけは何もされたくない。
そのはずなのに、妙に挑発する目線に興奮しそうになったことは、隆には内緒にしておくことにしよう。
「明らかに抱かれる側の顔してんのに、何隆のこと翻弄してんの。ウケるんですけど。」
「勝手に言ってろよ。もう寝る。てか、何しに来たんだよ。」
「たまにね、ちょくちょく来さしてもらってるんですわ、実は。」
「最悪な兄貴だな。全然似てないし。」
二卵性でも色々似ているとこってあるんじゃないのか。そう思ったら、隆にもこいつと同じ血が流れているのかと脳裏に過って、少しだけぞくぞくした。
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