旅~中章~(前編)

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明らかに異常と言えるほどカニバルモンキー達はクロウの握る短剣に警戒していた。 この悶着がもう少し続くかと思われた時、変化が起きた。 クロウに傷を付けられたカニバルモンキーの傷口から、突然血が噴き出たのだ。 その噴き出し方は完全に動脈を切った時の噴き出し方だった。 それからそのカニバルモンキーは、全身の血という血がその傷口から噴き出し、カラカラに干からびて絶命した。 現実的に考えて、絶対にありえない現象だろう。 そしてそんな同族の死に様を見て、カニバルモンキー達は慌てた様子で洞の淵へ目掛け壁を這い上がる。 しかしこの洞は壺のようになっており、中から壁伝いに登ろうものなら鼠返しになっている天井付近で逆さ状態になり、地面へと落ちてしまう。 そしてその落ちた先は丁度クロウが今居る洞の中央付近だったりする。 クロウはカニバルモンキー達の奇怪ともいえる奇行に最初は戸惑っていたが、アリアレーネのことを思い出し、目の前に落ちて来るカニバルモンキー達を次々に短剣で傷付けて行った。 「これで、最後だ!!」 クロウは言葉と共に一閃、最後のカニバルモンキーを斬りつけた。 バシャンッ クロウが血の池に仰向けに倒れこむ。 洞の底はアリアレーネを護る結界の所以外、干からびたカニバルモンキーの死骸とその血液で満たされていた。 底はもう全く見えず、カニバルモンキーの血で溢れ返り、成人男性の脛辺りまで溜まっていた。 そんな血の池に背中から倒れ込み、力を抜いて血の池に浮かぶ。 「病み上がりにとんだ災難だ糞ッ! アスターシャの野郎……、ギリギリまで絶対に動くなってそういうことかよ、あの悪魔め!!」 ライナードが自分に言ったことを全て理解した彼は、この状況、自分の想い人が重症になるほど傷付くような展開を作ったであろう男への憎しみに似た悪態を叫ぶ。 「そうだアリアは!!?」 アリアレーネが重症だったことを思い出したクロウは、急いで起き上がり自分の張った結界の方を見る。 「………は?」 「よぅ、悪魔だ。さっき振りだな。 ところで、俺が悪魔ってどういうことなんだ?その辺しっかり教えてくれないかヤングレラ?」 クロウの視界には、結界の中で彼には似つかわしくない爽やかな笑顔のライナードと、横たわるアリアレーネ、その彼女を膝枕しているラングウェイが写っていた。
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