801人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな一幕が湖の畔で行われている頃、ライナードは洞へと戻ってきていた。
彼が洞の中に入ると、疲れて寝たのかクロウが寝息を立てて眠っていた。
ライナードはそんな彼の枕元まで近付くと、アリアレーネの時と同様、無防備な彼の首へ突き刺し貫くように手と腕を伸ばし、一気に彼の首目掛けて腕を振るった。
「ッ??!!」
ライナードが腕を動かし始めた直後にクロウは目を覚まし、目の前の自分の首目掛けて向かってくる腕を視界に収めた。
「糞ッ!!」
迫り来る腕と自分の首との間に自身の腕片方を差し込み、反対の腕で迫り来る腕を掴んで軌道を逸らすことで何とか回避に成功した。
逸らされた腕は寝ているクロウの首の横の床に突き刺さる。
「ギリギリとはいえ意識的に回避を成功させるか…。回避の後に反撃をしてもらいたかったがまぁ、及第点か。」
クロウの首目掛けて腕を振るった張本人であるライナードは何でもないような様子でそう言うと、腕を引き抜きクロウを見下ろし、満面の笑みでこう言った。
「レギオンの心を折ってきた!」
「………理解が追い付かん。取り敢えずお前誰だ。アスターシャなのかもしれないが、俺はアイツのそんな表情(カオ)見たことない。」
クロウにそう言われ、自分がどれほど舞い上がっているのか少なからずライナードは理解した。ほんのり頬が赤いのは気のせいではないだろう。
片手で自身の顔を覆い、深呼吸を数回行い心を落ち着かせる。
そして再び、先程のことが無かったかのように同じことを言い放った。
「レギオンの心を折ってきた。」
「うん、だから、理解が追い付かないって。なんで俺はお前に寝込みを襲われたのかとか、アリアの心を折ったってどういうことなのかとか、ちゃんと最初から丁寧に説明してくれ。頼むから。」
クロウの切実な物言いに、ライナードは嫌そうな表情をしながら、先程までの湖の畔でのことと、アリアレーネとクロウを攻撃したのは知的好奇心からくる暇潰しだということを説明した。
「………………なんていうか……、俺もツァチェに賛成だ。アリアに殺されたら良いんじゃないか、お前?流石に酷過ぎるぞ?」
「お前もラングウェイ達みたいな事を言うのかよ……。」
「好きな奴をそんな風にされたってのを除いても、これはそう言わざる負えないほど酷いぞアスターシャ。」
「チッ!」
最初のコメントを投稿しよう!