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場所は再び湖の畔。
ライナードが立ち去ってから幾分かの時間が経過し、アリアレーネも自我を取り戻して数十分が経過したところ。
なにやら危ない発言をしていたメグを正気に戻り、互いに正常に会話が出来るようになったところだった。
「えっと……、ありがとう……。」
「いえ、あの、はい……。」
しかし二人の間にはなにやら気まずい雰囲気が流れていた。
二人の距離は近からずも遠からずという、まるで付き合いたての初心で純粋なカップルのような微妙な距離感だ。
そんな彼女達の許に良い意味でも悪い意味でも敢えて空気を読まなくなったライナードがやって来た。
ただ、今回は珍しく読まなくてもいい空気を読んだようだ。
「…………俺はそういうのに興味も無いし知識も無いが、なんというか、邪魔したな。」
「待ってぇぇえええええええええええ!!!!」
「待ってぇぇえええええええええええ!!!!」
二人の女の心からの叫びが湖に木霊したのは言うまでもない。
「待ってアスターシャ君!誤解なの!!誤解だから普段読まない空気を読まないでぇええ!!」
「そうです!お願いですから待ってください!!確かに私は貞操の危機を少なからず感じましたが、私の方はそれとは別の意味の気まずさなのです!!ですから待ってください!!!!」
己の身の潔白を証明するために、互いが互いを売るような醜い弁解が湖に木霊す。
二人に両手を拘束され身動きの取れないライナードは、ただただ彼女達の弁解を聞くだけとなっていた。その弁解の内容は次第に同じ内容も含まれていく。
流石に同じ内容が繰り返されていると、ライナードも苛立ちを覚える。
そして我慢の限界が訪れる。
「五月蠅い!くっ付くな!離れろ!!貴様等は金や食べ物に群がるスラムの人間かよ?!!」
ライナードもライナードで、彼女達への苛立ちが相当溜まっていたのか、腹の底から叫んでいるような大きな声を上げ、自分の手にしがみ付く二人を掴んで持ち上げ、湖に叩き込んだ。
「俺が意味も無く此処に戻って来たと思っているのか、この醜い言い訳ばかりする愚鈍共!!
ヤングレラの奴が襲われてるから教えに来てやったのに、これなら、そのまま見殺しにしとけば良かったぞこの発情期の魔物擬き共!!!!」
ライナードの言葉遣いはともかく、彼の気遣いは、彼にしては珍しく真っ当なものだった。
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