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先程まで自分の保身にためにメグを売っていたアリアレーネであったが、彼の言葉を聞いた途端に我に返ったかのようにハッとして、急いで湖から出て、先程とは別の意味でライナードに掴み掛かる。
「クロウが襲われてるってどういうこと!!?」
「触れるな! そのままの意味だ。俺が居ないときに新鮮な肉を求めて侵入してくる魔物が居て、今そいつ等があの洞に来ている。今はまだヤングレラ本人には触れさせていないが、それも時間の問題だ。 数が多い。」
「あの洞ですね!先に行ってます!!」
アリアレーネはライナードの言葉を最後まで聞かず、自分にとって必要な情報だけ聞くと、彼等を置いて、自分だけ先行した。
「このペテン師が。」
「ツァチェか。 なんの話だ?俺は本当の事しか言ってないぞ?」
「あぁ、そうなのかもな。本当にそんな魔物が居て、本当にヤングレラは襲われてるのかもな。 だがわざわざ私達の所に来なくても、お前ならそんな魔物共、簡単に一掃出来るだろ。」
「当たり前だろ。俺がこんな所にしか居ない魔物に後れを取る筈がない。」
「……………やっぱりペテン師じゃねぇか……。」
「これは俺がレギオンに与える最後のチャンスだ。」
「ぁ?チャンス?」
「ヤングレラとの話を聞いていたならわかるだろ。 此処でアレが動かなければ本当に国に送り返してヤングレラを死者扱いする。
つまり逆に動いたならば、アレの今回の結果はまだ秘密にしておく。本当に、文字通りアレにとってはラストチャンスだ。」
「……………ペテン師って言ったの、取り消すわ。」
「アスターシャさんはペテン師じゃなくて悪魔ですね。 本人にそれを教えず本人の気質だけ利用するなんて。
どうせその魔物も、さっき用意したんですよね? 性格の悪い。 本当に悪魔みたいなことしますね。」
「ここまでやって変わらないのであればもうアレは本当に駄目だ。ただの害悪だ。 最悪俺がこの手で殺す。」
「………アスターシャ君は悪魔みたいな人ですが、優しいですよね…。」
「は?」
「いえ、何でもないですよ。 それよりも早く、私達もあそこに戻りましょうよ。」
「あ、おい。」
ライナードはメグの意味深な言葉に惑わされながら、先に歩き出した彼女を追い掛けた。
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