旅~中章~(前編)

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それはまるで会話をしているようであった。 アリアレーネの存在に気付き彼女に触れ、彼女の放電を喰らったカニバルモンキー達から順に、放電による痛みとアリアレーネの存在を知らしめるかのように雄叫びを上げる。 その雄叫びは徐々に周囲に居た他のカニバルモンキー達にも伝播していき、遂には結界に群がっていたカニバルモンキー達を含め全てのカニバルモンキーが雄叫びを上げる。 ぐりん ギョロリ この表現が正しいだろう。 一斉にカニバルモンキー達の視線はアリアレーネに向けられる。 五十は軽く超える眼が一斉に自分を見て来る光景というのは、一種のホラーだろう。 その直後、カニバルモンキー達は一斉にアリアレーネに跳びかかる。 カニバルモンキー達の眼は狂喜に満ちていた。 それはまるで、手頃で甚振り甲斐のある気の弱そうな人を見付けた不良などのような、カモを見付けた時の人の笑みに近いものだった。 アリアレーネに跳びかかったカニバルモンキー達は、まず彼女の顔、彼女の肘、彼女の脚、彼女の腹目掛けて爪を振るった。 「そんな物は私には効きません!!今すぐここから立ち去ってください!!」 アリアレーネは自身に跳びかかって来たカニバルモンキー一匹一匹の爪をライナードの腕を斬り落とした時のように魔力で作った剣で、赤い火属性の魔力を纏った剣で斬り落としていく。 カニバルモンキーは彼女が自分達を斬らない事を今のやり取りだけで理解したのだろう、その表情を狂悪なものへと歪め、楽しそうに鳴く。 カニバルモンキーは彼女が自分達を傷付けないことを良い事に、先程と同様に、斬り落とされたままの爪で斬り掛かる。 爪を斬り落としてしまったカニバルモンキー何処を攻撃していいかわからず、アリアレーネはそれを剣で受ける。 【ギィ―――――!】 「ぐッ!」 正面から何匹かが彼女に爪を振るい、彼女がそれを剣で受けている間に、爪を斬り落とされたカニバルモンキーと斬り落とされていないカニバルモンキーが、後ろから彼女の背中とふくらはぎと横腹を切りつける。 爪を斬り落とされていないカニバルモンキーの爪は綺麗に、爪を斬り落とされたカニバルモンキーの爪は錆び付いた刃物で裂いたように鈍く、彼女の肉を切り裂き抉る。 綺麗に裂かれた傷口からは噴き出るように鮮血が、鈍く裂かれた傷口からは肉の下の内臓が覗く。
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