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状況は誰が見ても絶望的な劣勢だった。
彼女と後ろの結界が壊れるのは時間の問題だろう。それは彼女自身も重々承知だろう。
それでも彼女が諦めることはなかった。
座り込んだ状態のまま、魔力で剣やただの球を造ってそれを投げるだけ。簡単に避けられたとしても、それをアリアレーネはやり続けた。
「流石にもう、我慢出来るかよ……!!」
突如、そんな声と共に後ろのひび割れた結界が壊れ、中から右手に短剣を構えた人影がアリアレーネを庇うようにカニバルモンキー達の前に立ちはだかる。
「今度はお前が寝てろ。」
その人影からそのような言葉が発せられると同時にアリアレーネを護るように結界が張られる。
既にアリアレーネは目が見えていなかったが、それでもその人影の声で誰かはわかった。
わかったと同時に安堵し、安堵と共に先程まで張り詰めていた緊張が解け、彼女は意識を失った。
彼女が意識を失い眠ったことを確認した人影、クロウは左手に闇属性の魔力で出来た剣を造り出し構える。
「お前等……、アリアをこんなにしたツケを払う覚悟は出来てんだろうなぁ…?
しっかり命で払ってもらうからな!!」
その言葉と共にクロウは近くのカニバルモンキーへと斬り掛かる。
左の剣でカニバルモンキーの右側、彼から見て左に向け剣を振るう。
カニバルモンキーが彼の右側に避ける。
クロウはその避けられた先、カニバルモンキーの心臓が来るであろう位置へ向け、短剣を突き刺す。
カニバルモンキーはクロウの刺突をかろうじて更に左に跳ぶことで躱す。その時に少しだけ掠ったようで、カニバルモンキーの右脇下辺りに前から背中側にかけて一筋の赤い筋が出来る。
傷の付いたカニバルモンキーはクロウに対する警戒心を強め、彼から距離を取る。
他のカニバルモンキー達も彼等の様子を見ていたため、クロウ、というよりクロウの握る短剣から距離を取る。
一拍の間が双方の間に流れる。
互いに距離を取っているものの、その数は圧倒的差で、どちらにせよクロウ達が劣勢であるのには変わりなかった。
しかしクロウが距離を詰め寄ろうと少し前進すれば、彼の進んだ方向に居たカニバルモンキー達も同じだけ後退した。
クロウが駆け出しカニバルモンキーを斬ろうとすれば、カニバルモンキー達は慌てて逃げるように彼から距離を取った。
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