旅~中章~(前編)

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「なんっ、いつから!!」 「えーと、なんだったか? 『お前等……、アリアをこんなにしたツケを払う覚悟は出来てんだろうなぁ…? しっかり命で払ってもらうからな!!』だったか? 俺は最初、お前の身体の具合や魔物の強さ、それからお前に渡した短剣の事や戦うこの場の広さから考えて、すぐに致命傷を負うか、善戦しても半数ほどは絶対残ると思っていたんだ。 そのためにいつでも助けてやれるよう戦う準備もしていた。 だが結果はどうだ? 明らかな身体の限界突破。相手が自分から逃げてくれたとはいえそれを殺すために動き続ける気力。そしてなにより、それを本人が感じずただ無心に愛する者を傷付けられたやつを殺すという明確な殺意と精神力。 『人は大切な何かのためならいくらでも限界を超える。限界を超えて鬼にも阿修羅にもなる』とはあの馬鹿の言葉だが、鬼とか阿修羅が何かはわからないが今までその意味をよく理解してなかった。 だが今回のお前を見てどういうことかようやくわかった。 俺はヤングレラ、お前からそれを教わったよ。 人って……愛のためなら限界超えれるんだな!教えてくれてありがとうヤングレラ!!お前のおかげで俺もまた強くなれそうだ!!!!」 「いっそのこと殺してくれ!!」 顔を真っ赤にしながらライナードに叫ぶクロウや、それを見て言葉攻めにして更にクロウを辱めてるライナード達の隣では、メグがアリアレーネに緑色の剣と紅色(あかいろ)の剣を刺していた。 緑色の剣は損傷の激しい箇所に、紅色の剣は心臓近くに。 アリアレーネの身体から流れ出る血は徐々にその勢いが衰え、本当にもうすぐ死ぬところまで迫っていた。しかしメグが紅色の剣を突き刺したことによりその勢いは元に戻り、彼女の傷口からは壊れた蛇口のように血が止めどなく流れる。 その後、一番血が流れ出る勢いの強い傷口から順に緑色の剣を突き刺していく。 すると彼女の出血の勢いは治まり、出血多量で白くなっていた彼女の顔色は健康的な色へと戻り、彼女の呼吸も落ち着いた。 ライナードは彼女の回復を確認すると、唐突にクロウの張った結界の内側に天井部分が空いた結界を張った。 その空いた部分からクロウの結界を壊し、自身が張った結界の淵に跳び上がる。 その淵を足場に、右手の人差し指を立てた状態で自分の前で構えて、魔法名……だろうか? それを唱えた。 「”吸血”」
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