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元から抑揚なく青年は受付にこう言っていた。
それを顔色変えず一語一句違わず3回も言われた事に、受付は少なからず恐怖を覚え、青年を不気味な者を見る眼で見、そして今度はもっと力強い口調で同じ事を青年に言った。
「申し訳御座いません!此処はギルド!そして貴方様が面会を望まれた方は、この国の二本の牙とまで呼ばれるお方であり、このギルドの主!!
身元のわからない方を我等の主と面会させる訳にはいきません!
お引き取り下さい!!」
此処までハッキリ、キツく言った。だから流石に退くだろう。
受付はこう思った。
しかし、この青年はそんなもの関係無い。それがどうしたと言う様子で再度、同じ事を一語一句違えず言う。
「ガルシア・N・レギオンと面会を行いたい。
彼に取り次いで貰っても良いか。」
これに受付は、流石に言い知れぬ恐怖を感じたのだろう。ヒィッ!!と短く悲鳴を挙げ、少々お待ち下さい。と言い、奥へと消えて行った。
青年はその様子を見送ると、詰まらない物を見る眼で奥へと消えて行った受付を一瞥すると、カウンターを背にし、カウンターに体を預ける様に凭れ、酒場の方を見た。
今は時刻で言えば昼過ぎ、14時前後ぐらいだ。
こんな真っ昼間から酒場では、何人ものオヤジと呼ばれるぐらいの年代の男達が、ビールの様な酒を浴びる様に飲んでいる。
青年がそんな男達を観察していると、背中から貴方が前マスターと面会したい方ですか?と声が掛かる。
青年が振り返ると、そこには先程の受付と、受付の先輩なのだろうか、仕事のし過ぎで行き遅れた雰囲気を醸し出す真面目なキャリアウーマンな雰囲気の女性が立っていた。
「"前"マスターとは?」
青年はその女性に質問に対し質問で返す。
「………貴方、何も知らないの?」
女性は無知な大人を見る眼で青年を見ながら、呆れた様にそう言う。
「そうやって俺様の身元を発(あば)こうってか?
キシャシャ!ベテラン受付って感じで良いな。
だが俺様が用事有るのはガルシア・N・レギオンだ。更に言うならルーク・ゼクセレード。二本の牙だ。
お前は何も言わず何も知らず、ただ時の流れに流されてたら良いんだよお嬢ちゃん。」
青年は明らかに歳上だろうその女性にそう言うと、その女性の額にデコピンした。
女性はお嬢ちゃんと呼ばれた事、や思惑を見抜かれた事等に対して怒り、そして焦りを感じた。
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