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彼女は今まで、たった二三(にさん)言葉を交わすだけで思惑がバレたことなど無かった。
そして何より、自分より明らかに歳下の青年にお嬢ちゃんなんて呼ばれたことなど1度も無かった。
女性は無意識下だが、行き遅れた雰囲気を醸し出す年齢だ。本人もそれを気にしていたりする。
そんな自分をお嬢ちゃん呼ばわりする見た目歳下の青年に、女性は馬鹿にされたと思った。
だからだろう。彼女の唇の端がヒクヒクピクピクと痙攣しているのは。
「私の仕事は受付にてギルドにお越しになった方の対応をすること。なので受付の仕事をしているまでなのですが……。」
「キシャシャ!その中に、俺様みたいな目的しか言わない奴を最高権力者に会わせる様な仕事は無いと?」
「はい。」
女性は青年に対し、遠回しに帰れと毒を吐いた。
青年もそれを汲み取り、毒を毒で返す。
女性はそこに、肯定と言う返事一言に更に毒を乗せ返す。
すると青年は、独特な笑い方で急に腹を抱え笑い始めた。
「キシャ!キシャ!キシャ!キシャ!キシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャ!!
良いねお嬢ちゃん、最高だわ。キシャシャシャシャシャ!!
悪い悪い。ちょっと今のレベルを確認したかっただけなんだ。気を悪くしたなら謝る。」
急に腹を抱え笑い始めた青年はそう言うと、女性に2枚の金貨を渡した。
「それの1枚が謝礼だ。そしてもう1つがチップだ。
俺様はお嬢ちゃんみたいな人間は楽しいから好きなんだ。」
青年はそう言うと、今度は最初に自分の受付を行った者に銅貨を渡した。
「キシャシャシャシャ!お嬢ちゃんにはこれだ。
今お嬢ちゃん達に渡したのは俺様からの、お嬢ちゃん達へ対する評価だ。
後でガルシアに言っといてやるよ。」
青年はそう言うと、女性や受付を無視しカウンターを飛び越えギルドの奥へと入って行く。
女性達はその様子をワンテンポ遅れて認知し、直ぐ様青年に駆け寄りそれ以上奥へと行かぬよう体を使って引き留める。
「勝手に入らないで下さい!!これは立派な犯罪ですよ!」
女性と受付がそう言いながら、青年にしがみ付くも、青年は何処吹く風。
気にせずドンドン進む。
「キシャシャ!やっぱり最初からこうした方が早かったな!!」
青年は女性達を全く気にも止めず、更にその歩を速める。
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