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その言葉の意味を理解した時にはもう、既に男の視界は床しか写ってなく、首には鋭い物を突き付けられている感覚が有り、手には先程自分が握っていたナイフの感触は無く、その手も青年の膝で押さえ付けられていて、身動きが取れない状態だった。
男含め、青年を抑える為に彼にしがみ付いていて、結局此処まで運ばれた職員達は、青年が何をしたのか、何時動いたのか、全く認知出来なかった。
「キシャシャ!やっぱり雑魚じゃねぇか!ったく…ガルシアの野郎……、なんでこんな雑魚を自分の後釜なんかに選んだんだ?普通、ギルドだろうがなんだろうが、前当主を越えてから代は代わるもんだろ?
なぁ雑魚、そう思わねぇか?」
青年は男の命を握っていると言うのに、出て来るのはガルシア・N・レギオンと言う男への愚痴ばかり。
男はそれに対しキレた。
「貴様!さっきから聞いていれば俺を雑魚雑魚って!!それに父さんを散々馬鹿にしやがって!!
お前!自分が5年前に何をやったか!今何をやっているのか理解しているのか!!?」
「んぁ?」
男の怒声に青年は気の抜けた声を出してこいつ何言ってんだ?と言った顔をし、男を見た。
「お前、ガルシアの息子か?どれ、少し確認させろ。」
青年は軽い感じでそう言うと、何の躊躇いも無く男の首に突き付けているナイフで、男の首を斬った。
そしてそこから滴る血を指で掬い、口へと運んだ。
「っ!貴様!俺を殺す気か!?」
男がそう怒鳴るも、青年は素知らぬ顔で先程口に運んだ血の味を楽しんでいる。
そして楽しみ終えたのだろう。
青年は男を解放し、ナイフを男の耳の横数ミリの所に刺し立ち上がった。
「なるほど。確かに息子なんだな。しかもほぼ代替わりしているとは言え、まだガルシアは一応ギルドマスターと。
だから受付でガルシアがマスターと言ったり、この息子がマスターだったりと、情報が曖昧になった訳だ。
自身の紡ぐ言の葉は真実であり虚実とする。 情報操作も上手くやる…か。
キシャシャ!これはさっきのお嬢ちゃんに、もう1枚金(きん)をやらなきゃな。」
青年はキシャシャと独特な笑い方をしながら、部屋から出ようとする。
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