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「待て!」
出ようとする青年を、引き留める男。
その目は怒りに満ちていた。
「お前!5年前からそうだったが、人に対する態度が悪いだろ!!お前に常識は無いのか!!
今お前は、ギルドマスターの俺に刃を向け尚且つ傷付けた!!この意味をわかっているのか!!?」
前半はとにかく、後半の男の言い分はある意味尤もだろう。
ギルドマスター。
それはこの国に限らずどの国でも軍事施設でもあり、国の未来を担う者達の育成施設でもある。
そこの長であるギルドマスターに手を挙げると言う事は、それ即ち打ち首もの。
つまり男はこう言いたいのだ。
このまま帰れると思うなよ。
青年はその意図に気付いているのか気付いていないのか、いや、恐らく気付いているだろう。気付いている上でこう言った。
「……………で?」
「…………は?」
男は青年の言った事が理解出来なかった。
青年の言った事の意味を理解出来なかった。
男の中でギルドとは、国で一番の戦闘力の有る集団の集まりだと捉えている。
その集団を使い、お前を捕まえると言外に言い、青年もそれをわかっての返事をしたのだろうと言う事は、男にも理解は出来た。
しかし返って来たのはで?の一言であった。
男は混乱した。
「お前、俺の言っていることの意味を理解しているのか……?」
わかっているが、一応確認。そんな気持ちで出た言葉だった。
青年は迷わず、間髪入れずこう言った。
「理解してるけど? で?」
男は鳩が豆鉄砲を喰らったかの様に眼を丸くし、口を大きく開けた。
開いた口が塞がらないと言うやつだ。
青年はそんな男を見て、心底呆れたと言った様子で大きく溜め息を吐いた後、冷たく男を睨んだ。
「あのよ、そんな脅し文句でビビるのはそんな脅し文句でビビる奴だけなんだよド三流。
それと、お前の父親の居場所はお前の血から情報を抜き取って把握済みだ。つまり此処に俺様が留まる理由が無い訳だ。
あんま邪魔ばかりしてると消すぞ?」
青年の言葉に冗談と言った類いは全く感じられず、本気で男を消すつもりであると言うことを男を含め、その場に居た者達皆が感じ取った。
青年は一頻り男を睨むと、興味が失せたのか男から視線を外し、部屋から出る。
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