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「俺も今回の命令でお前の甘さが少しでもマシになるのなら、ある程度のことには目を瞑ろうと思っていた。自分の命が危険になれば、形振り構わなくなるだろうと。
でもここまで追い詰められてもまだ自分から戦おうとしない。流石にふざけ過ぎだ。これ以上お前の面倒を見ている余裕は無い。
生きたいのなら抵抗しろ!生きたいのなら戦え!!
それが出来ないのなら邪魔だッ!!さっさと王都に帰って2度と戦いの場に出て来るな!!」
アリアレーネはクロウの言葉にただ茫然とすることしか出来なかった。
それを見たクロウは舌打ちをし、アリアレーネを居ない者だと考え、目の前のドワーフ達を睨み付ける。
「(今までは不殺を意識して剣や魔法での攻撃を避けてきたが、流石にこれ以上は無理だ。左腕はもうほぼ感覚が無い。右目は霞んで正直見えてない。出血はまだ致死量には達してないがこれ以上流したら確実に死ぬ。今の俺じゃこの状況を生き残るのはほぼ不可能だ。
唯一この状況を打破出来る手が有るとすればアリアが戦う気になってくれることだが、それは望んでは駄目だ。当てにしたら両方死ぬ。なら……)」
クロウが必死に自分とアリアレーネが生き残る方法を考えている間にも、ドワーフ達はクロウ達を殺そうと襲い掛かってくる。
それにより彼の傷の数は更に増していき、遂には地に膝を着いてしまった。
「クロウ!クロウ!!」
アリアレーネの必死の呼び掛けも今の彼には全く聞こえてないのか、剣を杖代わりに無理矢理立ち上がる。
「クロウもう止めて!それ以上やったら死んじゃ」
「アリア逃げろ。」
そう告げると共に、クロウを中心に黒い煙が出現し、その煙はドワーフ達の後ろまで広がっていく。
「俺はもう助からないだろう。だがお前一人ならまだ助かる可能性はある。だからこのまま、俺を見捨ててさっさと王都に帰れ。」
「何言ってるのクロウ!!クロウも一緒に帰るの!!」
「何言ってるか聞こえねぇよ。マジでさっさと一人で帰りやがれ。」
尚も動こうとするクロウを止めようとするアリアレーネを振り解き、鉛のように重い自身の足を引き吊ってドワーフ達の前に出る。
「これが俺の最後の魔法だ!!最後にしては残念だがアリアが生き残れることを切に願う!!
標的を強制的に眠らせ悪夢を見せろ”ナイトメア”!!!!」
クロウの詠唱と共に、その場に居た煙に触れた者は強制的に眠りについた。
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