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「………。」
「そう睨むな。まぁ、確かにお前等の前で言うことではなかったな。
じゃああの女の許まで案内してもらおうか。」
「…………お前、碌な死に方しないぞ。」
「世界最強になるまで死ぬか。死んでやるもんか。」
そこから二人の間に会話はなかった。
互いに話さず、ただ黙々とアリアレーネの許へと向かった。
洞から近い湖の畔、そこにアリアレーネは体育座りで小さくなって座っていた。
「…………。」
ライナードはそんな彼女の背後に一気に近付き、彼女の首を斬るように左腕を右から左へと薙ぎ払った。
「!!」
アリアレーネは左腕が振るわれるのとほぼ同時に体を左へと倒すことで避け、右手が地面に着いたと同時に曲芸師のように右腕の力だけでその体勢のまま宙に跳び上がる。そのまま右腕に黄色い光を放つ魔力の剣を形成して振り切られた左腕を肘下の辺りから斬り落とし、クラウチングスタートの時のような格好で着地する。
腕を斬り落とされたライナードから飛び出る血飛沫がアリアレーネの顔に掛かる。
無意識だったのだろう、そこで初めて彼女は我に返ったようにハッとし、顔を上げた。
「なんだ、無意識ならしっかりと攻撃出来るんだな。意外だった。」
腕を斬り落とされたライナードはいつも彼女に向けている表情よりも幾分か優しい顔でそう言うと、彼女に斬り落とされた腕を切断面にくっつけ彼の扱う魔法で治すと、おもむろに彼女の隣に座った。
1メートルは離れているが……。
「突然の事だったとはいえごめんなさい!!」
「勝手に俺がお前を殺そうとして返り討ちに遭っただけだ、これに関しては気にするな。」
ライナードは目の前に拡がる湖に向け水属性で出来た魔力の塊を注ぎながらこう続ける。
「ヤングレラの一命は一応とりとめた。」
それを聞くと同時に嬉々とした表情でアリアレーネはライナードの方を向く。
「だが次、いつ目を覚ますかわからない。」
それを聞くと、今度は目に見えてわかるほど落ち込むアリアレーネ。
そんな彼女をライナードは目だけ動かし一瞥したあと立ち上がり、彼女の後ろに移動して今度は背中を蹴って湖へと文字通り蹴り入れた。
バッシャーーン!!
水が激しく波打つ。
水面に浮かぶ波紋の中心から、驚いた表情で、それでいて少し怒ったような表情のアリアレーネが出て来る。
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