アセンションプリーズ

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 最近巷ではアセンションなる不可思議な現象の話が話題になっている。  簡単に言うと人類の意識の上昇をそういうらしい。  俺、紗間宵次元(さまよい じげん)の会社でもまことしやかにその話をする者がいる。  アセンションは目覚める者とそうでない物に分けられるらしい。    もう完全にあれだ、スピリチュアルな世界だ。  なんでも精神世界ではこのアセンションが起きると次元上昇のため地球は二つに分裂するらしい。  当然アセンションしたものは魂のレベルが上がった別の次元の地球へ行く。 「紗間宵くんはアセンションしたい?」  何気なく隣の女子に言われて、まぁ、できたらね。と俺は呟いた。  だってさ上に行けたら争いごとのない平和な世界なんだろ?  上がれなかった者はここに取り残され、再びカルマ(修行)をしなきゃならない。  そんなことでまるで天国と地獄のようじゃないか。  全く俺にしてみたら眉唾物であるのだが、悪い世界よりはいい世界に行きたいとは誰もが願うことだ。  俺も平和で全ての人の心美しい愛に溢れた次元の高い場所へ行きたい。  俺はそんなことを思いながら遅い昼食を食べるため、会社のエレベーターに乗ろうとした。  いつもは人の多いエレベーターが今日はがらんとしている。  見慣れない制服を着た女が乗っていた。  俺は不思議に思いながら乗る。  ドアが締まった瞬間、女は俺の方に振り返る。白いお面を被っていたから一瞬ギョッとした。 「アセンションプリーズ! さぁ、あなたは愛に満ちた地球へ行くのでしょうか! この今の争いごとが尽きない地球でカルマ(業)をし続けるのでしょうか、それでは第一問です!」  彼女は白い手袋で人差指だけ上に上げると可愛くポーズを決める。 「は?」  いきなりクイズ番組のようにクイズを出し始める女に俺は困惑した。 「あなたの目の前に酔いつぶれた女性がいました。どうしますか?」 A助ける B助けない 「えっ、た、助ける?」 「ピンポーン上昇しまーす!」  エレベーターが一階上昇するのを見た。  さっき五階から乗ったから六階に上昇した。左端から カルマの修行へ←1.2.3.4.5.6.7.8.9.10→魂レベル上昇。  とわかりやすく書かれてあった。  よしっ、こ、これは善い行いをすれば上昇するんだな?
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