第1章

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「いいえ、私は平気です。……それで、小さい頃の近江さんがどうしたんですか?」 「あら、聞きたいの? あれはまだ幼稚園の頃、二人の女の子がかなちゃんに……」 「ちょっと! だめだめだめだめ!! こら、聞くな! 話すな!」  こんな調子で親戚たちと佐々さんに弄られまくって、昼休みが終わった頃には既に僕の体力は底をついていた。 全然休めなかった。 「疲れた……なんか声が、もう……」 「すみません、近江さんの反応が面白くて……つい」  ついじゃねえよ、まったく……。 「でも、近江さんのお家って皆さん仲が良くて、近江さんも何だかんだでものすごく大事にされてて、明るくて……本当に良いご家庭ですね」 「そう? そう言ってもらえるとありがたいけど、ただのお祭り好きっていうか、なんて言うか……あれ?」  視界の隅に、見覚えのある顔が映った。高校にはいるはずのない、小学二年生くらいの女の子。  妹の友達だ。  嫌な予感が頭をよぎる。 「さくらちゃん! どうしたの!?」  僕がそう声を掛けると、彼女は真剣に張りつめていた顔を緩ませて、泣きながら走ってきた。 「遥ちゃんのお姉ちゃん! 遥ちゃんが、遥ちゃんが……!!」 「遥!? 遥がどうしたの?」  彼女は涙で顔をボロボロにして、しゃくり上げながら言った。 「遥ちゃんが…………知らない人に連れてかれちゃった……」  
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