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「いいえ、私は平気です。……それで、小さい頃の近江さんがどうしたんですか?」
「あら、聞きたいの? あれはまだ幼稚園の頃、二人の女の子がかなちゃんに……」
「ちょっと! だめだめだめだめ!! こら、聞くな! 話すな!」
こんな調子で親戚たちと佐々さんに弄られまくって、昼休みが終わった頃には既に僕の体力は底をついていた。
全然休めなかった。
「疲れた……なんか声が、もう……」
「すみません、近江さんの反応が面白くて……つい」
ついじゃねえよ、まったく……。
「でも、近江さんのお家って皆さん仲が良くて、近江さんも何だかんだでものすごく大事にされてて、明るくて……本当に良いご家庭ですね」
「そう? そう言ってもらえるとありがたいけど、ただのお祭り好きっていうか、なんて言うか……あれ?」
視界の隅に、見覚えのある顔が映った。高校にはいるはずのない、小学二年生くらいの女の子。
妹の友達だ。
嫌な予感が頭をよぎる。
「さくらちゃん! どうしたの!?」
僕がそう声を掛けると、彼女は真剣に張りつめていた顔を緩ませて、泣きながら走ってきた。
「遥ちゃんのお姉ちゃん! 遥ちゃんが、遥ちゃんが……!!」
「遥!? 遥がどうしたの?」
彼女は涙で顔をボロボロにして、しゃくり上げながら言った。
「遥ちゃんが…………知らない人に連れてかれちゃった……」
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