遠来の客

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遠来の客

「……ここ、どこ?」 高校の養護教諭、通称 “保健室の先生”である 藤宮 恵 (フジミヤ メグミ)は 途方に暮れていた。 背を覆うほどの黒髪は 艶やかに肩へ流れ、 ベットから半身を起こした 寝乱れたその姿は 美しいとさえ言える。 しかし、当の本人は、 それどころではなかった。 「なんで保健室がこんなコトになっているの!?」 カーテンを含め 壁紙や天井も 白一色の殺風景な いつもの保健室が 趣味の良い洋間に変身している! 窓からの光は頼りなく 部屋を照らし、 今が夜ではないことだけが辛うじて判る。 その光に映える 暖かみのある 明るいブラウンの壁紙。 壁に架かった田園風景の絵画と 額に入った 古風な外国人のモノクロ写真。 枕元には 白い陶器の水差しと洗面器。 どれも全く見覚えがない。
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