救世主

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「すまんが暖炉に火を入れてくれ、 シェットランド夫人。 6月とはいえ今日は冷えるのでな」 「はい、もう入れておりますよ」 シェットランド夫人は 洗面器にお湯を注ぎ 泥で汚れた恵たちの素足を洗い、 濡れた服も着替えさせてくれた。 「ヴォルデンベルグ伯爵に お会いになるのなら このくらいのおめかしは致しませんとね」 夫人は恵の黒髪を 高く結い上げる。 「あの……、その伯爵というのは どんな方なんでしょう?」 恐る恐る尋ねる恵に シェットランド夫人は どこか夢見るように答える。 「それはそれは素敵な 殿方ですよ! お会いになれば解ります!!」 恵は何故かますます寒気が募っていった。
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