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 捜査会議の翌日、浅野は朝から聞き込みに歩き回っていた。運良く黒田の相棒が娘の結婚式で休みを取っていたこともあり、浅野は黒田と二人一組で聞き込みができることになった。  階級では浅野の方が上だが、刑事の先輩として黒田から学ぶつもりでいた。 「今のところ収穫はなしだな」  四人目の聞き込みでもこれといった収穫は得られなかった。  被害者はかなり生活に困窮していたのか、三ヶ月前に使用料金が支払えなくなったために携帯電話は解約され所持していなかった。  そのため家宅捜索や周辺の洗い出し、当日の被害者の足取りなどを手分けして聞き込みにあたっている。  唯一ホシに繋がる遺留品だと思われたネクタイピンから検出された指紋は、意外にもマル害のものだった。必要のないネクタイピンを、しかも自分の名前ではないイニシャルが刻まれたものをなぜ持っていたのか。それとも、そもそもあれはイニシャルではないのか。まだまだわからないことばかりだ。 「ええ。親しくしていた人物はいなかったんですかね」  マル害の三井は日雇い労働者で、仕事があるとわかればどんな現場にも赴いて精力的に仕事をしていたようだ。だが、ここ最近は三井を見かけていなかったという。  仕事以外で特に親しくしていた人間も今のところ見つかっていない。 「ちょっと休憩するか。喉渇いたな」  立ち止まって携帯の操作をしていた黒田は顔を上げて浅野を見た。 「そうですね、少し休みましょう」  そう言いながら手頃な店がないかと周りを見た浅野に向かって移動しようと提案した黒田は、近くのコインパーキングに停めた車へと歩いていく。  浅野は黒田がもうどこかに行くことを決めているのだとわかり、それなら任せようと黙って助手席に乗り込んだ。
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