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 十分ほど車を走らせた先にあったのは、テラス席がある女性が好みそうな洒落たコーヒーショップだった。  五台ほどしか停められない店の駐車場に車を置いて歩いていくと、そこには〈N'sカフェ〉と書かれた看板が出ている。すぐ隣はケーキ店のようで、甘い香りが漂っていた。  男らしい黒田でもこんな店に男だけで入るのかと意外性を感じていると、ドアの取っ手に手をかけた黒田が突然振り向いた。 「今、失礼なこと考えなかったか?」  ニヤリと笑いかけられて言葉につまる。まさか自分の思考を読まれたのだろうか。それとも、黒田も自分には不似合いだと思っているのか。  すぐに答えられなかった浅野に、黒田は面白がるような顔を向けてくる。いたずらっぽいそんな表情も魅力的で、不意打ちをくらった浅野は一瞬固まった。 「いらっしゃいませ。あっ、黒田さん」  前を向いた黒田がカウベルの鳴るガラスドアを開けると、カウンターの中にいた若い男が黒田を見て笑いかけてくる。 「早かったね。近くにいたんだ?」
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