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 浅野は我に返り黒田のあとを追う。  店のカウンターにいる男は二十代前半だろうか。女性にモテそうな甘いルックスに柔らかそうな栗色の髪。細身の長身からすらりと伸びた脚は、ソムリエエプロンで隠れている。  もう何度もきている様子で、黒田は真っ直ぐカウンター席へと歩いていき、慣れたように男の正面に腰を下ろした。 「ああ。おい、こっちだ」  カウンターの男を見ていた黒田は浅野へと向き、店内を窺いながらゆっくり歩いていた浅野に隣に座れとスツールの座面を叩いている。笑顔で見ている男に頭を下げ、黒田の隣に座った。 「珍しいね。黒田さんが人を連れてくるなんて。いつもひとりなのに」 「なんだよ。それじゃあ俺が寂しいやつみたいじゃねぇか。俺だって人を連れてくることだってあるんだよ。紹介するな。こっちは今の捜査の相棒で警視庁の浅野刑事だ」 「へぇ、警視庁の刑事さん」  男は目を丸くし驚いたあと、値踏みするように上から下まで見てくる。身の内までも覗かれそうな視線に居心地が悪い。浅野の何を見抜こうとしているのかはわからないが、探るような視線だったのは確かだった。
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