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どうして食べること前提なのか。浅野は腑に落ちないながらも美味しそうな名前の羅列に心を奪われる。
ここへ入るとき、いい匂いをさせていたケーキ屋がそうらしい。甘いものが好きな浅野には魅力的なオススメだ。
だが今は仕事中。しかも黒田が一緒なのにケーキを一人で食べている姿を想像すると、甘い飲み物を飲むより情けないやら恥ずかしいやら。
「いや、いいです」
「わかりました。じゃ、ごゆっくり」
瑛太がメニュー表を持って離れる。すると黒田がさっきのやり取りを苦笑しながら話てきた。
「さっきの真に受けんなよ。あいつがふざけて言ってるだけだ。男に口説かれてもうれしかないだろう。あいつはあんなことを言って俺を揶揄うのが好きなんだ」
「そうなんですか。でも、黒田さんになら口説かれたいかも……なんて、面白くないですね」
自分でも、咄嗟にこんな返しができるとは思わなかった。だが、黒田の反応を見るのには都合がいい。
目を見つめながら少し溜めた数秒、黒田は眉をぴくりと上げ、すぐに視線を逸らした。
「ははっ。あんたもこういう冗談を言うんだな」
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