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 ――もしかして、動揺してる?  視線が泳ぎ、テーブルの上でカップを弄んでいる。あんなに堂々としている黒田が、浅野の言葉に動揺しているのだ。そんな姿を目の当たりにすれば、わずかな希望に期待してしまう。  だが、今は仮にも仕事中だ。気を逸らすように店のことを話題にした。   「静かでいい店ですね」 「ああ、まぁこの時間はな。昼時や夕方が一番混む。あと一時間もすれば学校帰りの学生でいっぱいだ」  腕時計を見る。三時を少しすぎたところだった。  改めて店内を見てみる。今見ている範囲に従業員の姿は見当たらない。もしかしてここをひとりで回しているのだろうか。 「彼がひとりでこの店を?」  今店内にいるのは、カウンターに浅野と黒田、それから初老の男性がひとり。テーブル席には主婦らしき中年の三人組だけだ。この人数ならひとりでもどうってことはないだろうが、店内がいっぱいになるほど客が入るとなると、とてもひとりでは無理だろう。 「いや、従業員は三人いる。常に店には瑛太ともうひとりがいるようになってて、夕方になると高校から帰ってくる瑛太の弟が手伝うんだ」
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