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 たまたま今は姿が見えないだけでもうひとりいるらしい。  この一杯を飲んだらまた聞き込みが待っている。だいぶ飲みやすい温度になったブレンドを飲んでいると、どこかにいっていた瑛太がカウンターに戻ってきた。 「はいこれ、ご所望のもの」  ふたつに折り畳まれたB5サイズの白い紙を黒田に手渡している。なんだろうと思いながらも個人的なものを見るわけにはいかず、そこから目を逸らした。 「さすがだな。助かった、ありがとな」  そう言って立ち上がった黒田にいこうかと声をかけられ腰を上げたときだった。  向かおうとしたドアのカウベルを鳴らしながら、ブレザー姿の男子高校生が入ってくる。 「うわっ、またきてる」 「おう、今帰りか」 「ああ、まあ。黒田さんはまたサボり?」
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