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「何か今の言い方だと、兄弟ってより恋人みたいに聞こえちゃって」  想っているという言葉は家族や友人にも使うが、会話の雰囲気からそれだけじゃないような気がした。 「あいつらは戸籍上は兄弟なんだが血は繋がってないんだ。親同士の再婚で兄弟になった。年が離れてるせいか、瑛太はまだ小さかった理人の世話をよくしていたそうだ。初めてできた弟が可愛くてしょうがなかったんだろうな。目に入れても痛くないってほどだったらしい」  浅野は口を挟まず黒田の話を聞いていた。 「それが、瑛太が高校生になった頃、理人を弟以上に想ってることに気づいたんだ。絶対好きになっちゃいけない相手を、しかも自分の可愛がってきた弟に対して恋愛感情を持ったあいつは、荒れた」 「荒れた?」  今まで黙って聞いていた浅野は初めて口を挟む。 「どうにもできない気持ちを何かにぶつけないと、自分が潰れそうだったんだろうな。それまで縁のなかった不良グループと付き合うようになって、しかもいつの間にかリーダーだ。よくも悪くも素質があったのかもな。その頃だ、俺が瑛太と知り合ったのは」  意外な経緯(いきさつ)に浅野は驚きを隠せなかった。さっき会った瑛太はとても不良だったようには見えない。穏やかで優しそうで、そんなこととは無縁のような顔をしていたと、さっきまで見ていた瑛太の顔を思い出す。
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